国際情報

北朝鮮のミサイル発射実験失敗は幹部人事に影響しなかった

 金正恩体制がスタートして以降、真の権力者が誰なのか把握するのはなかなか難しい。真の序列をどう見抜くか、ジャーナリストの惠谷治氏が解説する。

 * * *
 北朝鮮権力内部の真の実力者を探り出すためには、【1】労働新聞などの公表序列、【2】所属組織での地位、【3】党・軍・政の兼職状況、(「政」は「政府=閣僚」ないし、「国家機関=国防委員会」の役職を指す)【4】金正恩の視察などでの同行・同席回数、【5】叙勲や昇進状況、【6】金正恩との個人的関係や年齢など、6つの要素を考慮する必要がある。

 これを基準に判断すると、崔竜海が金正恩に次いで兼職が多く、最も注目すべき存在だとわかる。

“祝砲”となるはずだったミサイル発射は見事に失敗したが、幹部人事には影響しなかったようだ。北朝鮮の核・ミサイルなど兵器開発の総責任者は、党軍需工業担当書記である。2010年9月、軍需工場が多い慈江道の党責任書記だった朴道春(68歳)が就任。朴道春も軍人ではないのに、2月に大将の階級を与えられ、党政治局員候補から党政治局員に昇格し、5人しかいない党書記兼職者となり、序列17位から9位に浮上した。

 配下の党機械工業部の朱奎昌部長(83歳)と、核・ミサイル製造を担当する第2経済委員会の白世鳳委員長(66歳)の2人は、朴道春が大将になった際に、上将の階級を与えられた。朴道春、朱奎昌、白世鳳の3人は「核・ミサイル開発トリオ」とされ、金正恩に厚遇されている。

 また、国葬委員会序列59位だった玄哲海大将(77歳)は、4月に次帥に昇進し、党政治局員候補を経ず、いきなり党政治局員に抜擢された。そして、党中央軍事委員にも新任され、序列17位に急浮上した。

 人民軍総政治局組織副局長だった金元弘大将(66歳)は、金正日が兼任していた国家安全保衛部(秘密警察)部長という重職に任じられ、序列58位から18位に急上昇。さらに、昨年4月から人民保安部長(内務相)を務める李明秀大将(78歳)も、党政治局員、党中央軍事委員、国防委員の3職に新任され、序列は74位から一気に19位に駆け上った。

 この3人は金正日時代から軍部隊視察の常連同行者で、金正恩の視察にも頻繁に同行。今回の激動人事を見ると、治安組織を重視し、強力な警察国家にしようとしている意図が読み取れる。

※SAPIO2012年6月6日号

関連キーワード

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン