国際情報

前原誠司氏は私の構想を参考にしたかもしれないと大前研一氏

 プーチン氏が大統領に返り咲いたロシアと日本の間には北方領土問題が存在し、その関係は必ずしも良好とはいえない。だが協力体制が不可欠と大前研一氏は語る。以下、大前氏の解説である。

 * * *
 ロシアと手を組むことは、日本にとっても大きなメリットがある。その最たるものが、原発停止により喫緊の課題となっている新たなエネルギー源の確保である。

 たとえば、サハリンから日本にパイプラインを敷けば、火力発電用燃料の主力である天然ガスが安く確保できる。実際、サハリン南端から北海道・稚内までの宗谷海峡は約40㎞しかないので、やろうと思えば簡単にできる話だ。ウラジオストクから新潟のルートも難しくはない。

 むしろロシアからのパイプラインを敷かないでいると、日本は2つの点で不利になる。1つは、すでに中国がパイプラインを敷いているので、このままいくとサハリンの天然ガスが中国に独占される。もう1つは、現在のようにLNG(液化天然ガス)を専用タンカーで輸入する場合、気体のまま送るパイプラインに比べて値段が2倍くらいになってしまうことだ。

 しかも、このところ世界的には、タイトガス、コールベットメタン、シェールガスといった非在来型の天然ガスの開発が進んでいる影響で、在来型天然ガスの価格は原油に比べて大きく下がっているが、日本が輸入しているLNGの価格は長期契約で原油価格とリンクしているため、下がるどころか上がっている。その結果が電気代の値上げに繋がっている。

 また、サハリンで発電した割安な電力を直流高圧送電で稚内まで持ってくるという手もある。さらには、日本国内では全く解決策のない「使用済み核燃料の永久保存」について、シベリアのツンドラ地帯を貸してもらうという構想も魅力がある。

 先日、モスクワを訪問した民主党の前原誠司・政調会長と天然ガス独占企業「ガスプロム」との話し合いでは、サハリンから稚内へのパイプライン敷設の議論が出てきたという。

 今回紹介した私の構想はすでに親しい民主党の国会議員に伝えてあったので、もしかすると前原氏はそれを参考にしたのかもしれない。いずれにせよ、これは9月にウラジオストクで開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議までに対日関係を改善させたいというロシア側の意思表示であることは明らかだ。

 本稿執筆時点ではまだ成果がわかっていないが、近く、プーチン大統領と個人的にも親しい森喜朗・元首相が特使としてロシアに派遣されるという。北方領土問題、平和条約の締結、極東ロシア開発とエネルギー協力などについて画期的な進展を期待したい。

※SAPIO2012年6月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
「What's up? Coachella!」約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了(写真/GettyImages)
Number_iが世界最大級の野外フェス「コーチェラ」で海外初公演を実現 約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン