国内

意思決定恐れぬ橋下徹氏は小泉元首相と異なると茂木健一郎氏

 橋下徹・大阪市長の圧倒的な「意思決定」のスピードと政策実行プロセスへの強いこだわりは、従来の日本の政治家になかった画期的な新しさだ。こう分析するのは、橋下徹氏とツイッターで意見を交換し、立場を超えて互いを認めあう間柄の脳科学者、茂木健一郎氏だ。茂木氏が橋下現象を解析する。

 * * *
 コンプライアンスとかルールの遵守といったことが過剰に言われるようになっている現在の日本では、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグのような「規格外の人物」がなかなか出てこない。何か問題が起きると、マスコミがバッシング報道をして、その人が陳謝して一件落着というようなことをずっと繰り返してきたからだ。

 たとえば堀江貴文氏が出てきた時、多くの若者が彼を支持し、既存の秩序を変えてくれると期待したのに、結局ああいう形で潰されてしまった。

 日本人は皆、このままではダメだと分かっているにもかかわらず、自らつくった細かいルールやコンプライアンスでがんじがらめの状態になっている。人は言葉に出して言うことを避け、企業はお互いを監視し合う。息苦しいまでの閉塞感が日本全体を覆っている。

 そうした中で登場したのが橋下徹・大阪市長だ。彼が多くの人から注目され、支持されているのは、チマチマと細かいルールを積み上げ、大きな意思決定ができなくなってしまった今の日本の閉塞状況を打破してくれるのではないかという期待があるからだと思う。

 かつての小泉純一郎・元首相は抵抗勢力をつくり出し、彼らと「小泉劇場」といわれるバトルを繰り広げることで人気を高めていった。橋下氏も「仮想敵」とのバトルを通して「劇場」をつくり、関心を引きつけて政治的なムーブメントに結びつけているところは共通している。

 しかし二人には決定的な違いがある。小泉氏が打ち出した郵政民営化について、当時の多くの国民は「このままではダメだ」「民営化でいいんじゃないか」と感じていた。小泉氏はそうした国民の気分を的確に掴んでいたからこそ、あれほどの圧倒的な支持が得られたのだ。

 しかし橋下氏の場合は状況がまったく違う。3.11以降、国論を二分するような重要事項がどんどん出てきた。その象徴が原発の再稼働問題である。原発を使い続けるのか、脱原発なのか、非常に激しい議論が行なわれていて、どちら側にもそれなりの言い分、譲れない世界観、価値観がある。日本国民が一枚岩でなく、大論争する時代に橋下氏は登場したのだ。

 今までの政治家の感覚からすると、こうした問題について旗幟を鮮明にするのは危険なので、結論をごまかすか、先送りしてしまいがちだ。しかし橋下氏は違う。どんな国論を二分する重要事項であっても、意思決定することを恐れないし、厭わない。この点が小泉氏と異なるところで、同氏より一歩進んでいると評価している。

※SAPIO2012年6月27日号

関連記事

トピックス

元皇族の眞子さんが極秘出産していたことが報じられた
《極秘出産の眞子さんと“義母”》小室圭さんの母親・佳代さんには“直接おめでたの連絡” 干渉しない嫁姑関係に関係者は「一番楽なタイプの姑と言えるかも」
NEWSポストセブン
岐阜県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年5月20日、撮影/JMPA)
《ご姉妹の“絆”》佳子さまがお召しになった「姉・眞子さんのセットアップ」、シックかつガーリーな装い
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《極秘出産が判明》小室眞子さんが夫・圭さんと“イタリア製チャイルドシート付ベビーカー”で思い描く「家族3人の新しい暮らし」
NEWSポストセブン
ホームランを放ち、観客席の一角に笑みを見せた大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平“母の顔にボカシ”騒動 第一子誕生で新たな局面…「真美子さんの教育方針を尊重して“口出し”はしない」絶妙な嫁姑関係
女性セブン
川崎春花
女子ゴルフ“トリプルボギー不倫”で協会が男性キャディにだけ「厳罰」 別の男女トラブル発覚時に“前例”となることが避けられる内容の処分に
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日の親子スリーショット》小室眞子さん出産で圭さんが見せた“パパモード”と、“大容量マザーズバッグ”「夫婦で代わりばんこにベビーカーを押していた」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
《司忍組長の「山口組200年構想」》竹内新若頭による「急速な組織の若返り」と神戸山口組では「自宅差し押さえ」の“踏み絵”【終結宣言の余波】
NEWSポストセブン
第1子を出産した真美子さんと大谷(/時事通信フォト)
《母と2人で異国の子育て》真美子さんを支える「幼少期から大好きだったディズニーソング」…セーラームーン並みにテンションがアガる好きな曲「大谷に“布教”したんじゃ?」
NEWSポストセブン
俳優・北村総一朗さん
《今年90歳の『踊る大捜査線』湾岸署署長》俳優・北村総一朗が語った22歳年下夫人への感謝「人生最大の不幸が戦争体験なら、人生最大の幸せは妻と出会ったこと」
NEWSポストセブン
漫才賞レース『THE SECOND』で躍動(c)フジテレビ
「お、お、おさむちゃんでーす!」漫才ブームから40年超で再爆発「ザ・ぼんち」の凄さ ノンスタ石田「名前を言っただけで笑いを取れる芸人なんて他にどれだけいます?」
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン