国内

志茂田景樹 「いまの若者は恋愛の本当の素晴らしさ知らない」

若者の恋愛事情について語った志茂田景樹氏

 ツイッターで多くの若者からの悩み相談に答え、その含蓄あるツイートが話題の直木賞作家・志茂田景樹氏(72才)。ツイッターを通して感じることは、恋愛、仕事、人間関係という3つの課題をきっかけに心のリズムを崩している若者が多いことだという。特に多い恋愛の悩みについて、志茂田氏の考えを聞いた。

 * * *
――フォロワーから一番多い悩みは恋愛相談のようですね。
志茂田氏:いまの若い人は素敵なラブストーリーも読んでいるし、恋愛に関する情報も色々と持っている。だけど、こういう恋をしたいなんて思っても、実質的にはなかなかできない。例えばぼくらの頃は、貧しい同士だったり障がいがあったりして、ロミオとジュリエットみたいなドラマチックな恋もできたけど、いまの若い人たちの環境はそうじゃないもの。だから恋愛の本当の味っていうか素晴らしさをよく知らないというか、感じられないのかもしれないね。

 小説も含めてバーチャルな世界で恋愛が描かれていて理性では知ってるんだけど、非常に安直な感じで恋愛というものを捉えてるのかなという気がしますね。いまの若い人はネットだなんだで意識がグローバルになってるのかと思っていたら、逆に意識が狭くなっていて、恋愛も含めて対人関係がそんなに広がってないんですよ。本当はただの異性の友人関係なのに、当人同士は恋愛だと思ってなんとなく恋人関係になっていたりね。元カノといま付き合っている彼氏が自分の友達だったり、10人前後の人間関係の中で元カノだ元々カノだなんてやってるんで、すごく狭い世界の中で色々といき違ってうまくいかなくなっている。

 ぼくらのときには、「あ、振られたのか」といっときはガクッとくるものの立ち直るんですけど、いまの若い人たちは、本当は大した行き違いじゃないのに悩み方が深刻すぎちゃうの。昔はそれが自然にわかる状況があったんですけど、要は世界が狭いからそれが見つからない。だから余計、こんなことでまだ悩んでるのって感じで悩んでいるんですよね。

 ツイッターでぼくがよく「そんな大ごとじゃないんだよ、そんなに気にしなくていいんだよ」っていういい方をする理由はそこなんですよね。恋が始まる頃の悩みってのは実は色んな意味で楽しみでもあるんですけど、その始まりあたりをスーッと過ぎてきちゃってるし、うまくいかなくなったのも恋愛としての別れじゃなくて、一種の友人関係のちょっとしたいき違いの結果という感じ。でもそこで深刻に悩んでしまっている。

――草食男子が増えている一方で、女性が婚活を頑張っていることをどう思いますか?
志茂田氏:生理的な要素で見て、世界やテリトリーを広げていくという男本来の役割が、いまの若い人から失せちゃってますよね。あまりうまくいっていない対家族関係で満たされないものを、狭い友人関係の中で満たそうとして、なおかつ変にそこを自分の居場所だなんて思いこんじゃって、そこから出て行くことをあまりしない。むしろいまは女性のほうが行動的になっている。

 いまの社会を見ると、欧米に比べて日本はまだまだ本質的には男尊女卑意識が残っているにもかかわらず、女性が全体的にどの分野でも力をつけて能力を発揮しつつある。着実に社会全体で女性の力が強くなってきているような感じがするんですよね。そういう変化がもろに感じられるのは若い人の世界なんですよ。だから30年、40年前の人からみると、なんとなく草食系に見えるということもあると思います。

――女性が婚活しても、男性が恋愛に消極的だと結婚に至らないのでは?
志茂田氏:確かに女性側からのそういう質問は圧倒的に多いですね。いまの若い男性は、結婚して赤の他人と生活していかなきゃいけない、子供もできて家族を作らなきゃってことに女性以上に一種の怯えや恐れを持っている感じがしますね。その怯えと恐れが結婚に対する敬遠感を醸し出しているのかな。やっぱり若い女性はいまも昔も、幸せっていうひとつのキーワードを結婚に見出している部分が大きいですよね。素晴らしい相手といい結婚したらとても幸せなんだろうなっていう意識の女性が多いですから。女性は婚活力がついて行動力が強くなってるんで、婚活に対してのエネルギーの度合いも女性のほうが際立ってしまうんですね。結婚っていう言葉に腰が引けてしまう若い男性との一種の価値観の衝突が、さらに男性を草食系に追いやっているんじゃないかな。

――では、結婚したい女性はどうしたらいいでしょうか?
志茂田氏:意外とそういう女性は、“虎挟み”じゃないけど、いい相手を捕まえてますよ。女性が婚活力を発揮して、相手は草食系ですから捕まえてしまえばいい(笑い)。ただ、日本の離婚率が高くなったのは女性のせいでもあるんですよ。一緒になってみたけど、2年も経ってみたら全然物足りないやと。だって、別れようかどうか迷ってますなんて相談を見ると大体、女性です。そういう女性に別れた方がいい的な回答したら、多分別れますよ。

――女性が年上の年の差婚も増えていますが。
志茂田氏:女性のほうが10才以上年上なんてのも結構あって、それは年の差が関係なくなってるんですね。要するに結婚しようっていうエネルギーの差だと思うんですよ。男性が草食系ですから、女性がばく進しているわけですよ。要するに女性がバクテリア化してるのかな(笑い)。結婚して食い尽しちゃうと、もういいやっていう部分もあるのかなっていう気がします。だから女性に振られたっていう若い男性が多いですよ。4度も5度も振られてるって。そのたびに精気を失ってるから10年後が思いやられる。

――恋愛や結婚に関する相談への回答は、ご自身の経験から?
志茂田氏:割と経験から派生していることから出していることが多いです。あるいは自分の経験じゃないけど、割と見ていることからでしょうね。色々と自分の応用問題として、こういう答えでいいんじゃないかなって答えていることもありますけど、色んな人の結婚をここ何十年間で見てますからね。わりと時代が変わってもそのどれかに当てはまっちゃうんですよ。だから、そこから得た感想というか教訓を書けば、大体、間違いはないんですね。

【志茂田景樹(しもだ・かげき)】
1940年3月25日、静岡県出身。小説家。1980年に『黄色い牙』で直木賞を受賞。90年代には『笑っていいとも!』などのバラエティー番組にも出演し、タレントとしても活躍。1999年に「よい子に読み聞かせ隊」を結成し、読み聞かせ活動を中心に絵本・児童書作家としても活動している。

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン