国際情報

ゴールドマン・サックス ギリシャ危機を10年前に予測していた

 超緊縮財政、増税、雇用調整……。今、国家破綻を食い止めようと、懸命の努力をしているのはギリシャだけではない。スペイン、イタリア、そして日本も、再建のための道筋を必死に見つけようとしている。だがその一方で「危機」を弄び、食い物にしている輩がいる。不幸こそカネ儲けのチャンスだとして、跳梁跋扈している彼らの儲けの手口とはいかなるものなのか。

「どんな対策をしてもユーロ圏の崩壊は避けられない。崩壊させるかどうかを決めるのは政府ではなく、市場を支配しているゴールドマン・サックス(以下「GS」)だ。ヘッジファンドは、儲かるのであれば、ギリシャが潰れようが世界経済が崩壊しようが気にしない」

 昨年9月26日のBBCニュースに生出演したある独立系トレーダーは、このあまりにも率直な発言でキャスターらを唖然とさせた。

 この時の映像がユーチューブにアップされて世界中で話題になったが、トレーダーはその後も「大恐慌が起きることを3年前から祈ってきた」などとあからさまに語っている。

 暴落を予想し、大量の「空売り」を仕掛け、巨万の富を得る。世界経済危機で苦しむ「99%」の立場からすると、人の不幸をネタに金を儲けるというのは非常に腹立たしいが、それが投機の世界に生きる人間の感覚だ。金融市場はゼロサムゲームで、彼らも、暴落に賭けながらもし暴落しなければ大損害を被る。

 しかし、暴落がもし“仕組まれたスキーム”だったとしたらどうだろうか。

 現在の欧州危機はギリシャの財政危機に端を発したが、経済アナリストの朝倉慶氏は「ギリシャ危機は巧みにプログラムされていた」と話す。

「99年にユーロが統合された時、ギリシャは債務が多いために条件を満たせず加盟できなかった。加盟するには財政を“粉飾”する必要があり、そこでGSがギリシャに提案したのが、通貨スワップという手法で、財政赤字を表面上覆い隠す“粉飾プログラム”です」

 GSは、ギリシャの将来の空港税や公営宝くじ収入を担保に数十億ドルの資金を提供。ギリシャはそれを借り入れではなく通貨スワップとして簿外処理をした。この取引自体は違法ではないが、簿外処理で赤字隠しをしたに等しい。こうして表面上、財政を健全化させ、2001年にユーロに移行できたのである。

 このシナリオを書いたのがGSで、2001年だけでも3億ドル(当時のレートでおよそ350億~360億円)もの手数料を得たという。

 当たり前だが、GSには、よほど経済実態が良くならない限り、通貨スワップが終わる2010年後にギリシャが財政破綻することはわかっていたはずだ。実際、2010年4月にギリシャ危機は表面化した。

 あらかじめ暴落することがわかっていれば、空売りでボロ儲けできる。現実にGSを筆頭とする国際金融資本は、空売りで巨額の利益をあげたとされている。

※SAPIO2012年7月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
舞台『シッダールタ』での草なぎ。東京・世田谷パブリックシアター(~2025年12月27日)、兵庫県立芸術文化センター(2026年1月10日~1月18日)にて上演(撮影・細野晋司)
《草なぎ剛のタフさとストイックさ》新幹線の車掌に始まり、悟りの境地にたどり着く舞台では立見席も
NEWSポストセブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
「異物混入」問題のその後は…(時事通信フォト)
《ネズミ混入騒動》「すき家」の現役クルーが打ち明ける新たな“防止策”…冷蔵庫内にも監視カメラを設置に「なんだか疑われているような」
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン