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縄文時代から食べてた「うなぎ」 5000年経っても生態謎のまま

日本人とうなぎは5000年のつきあい

 今年の「土用の丑の日」は7月27日だ。だがうなぎが高い。漁獲量が減り、その取引価格はまさに「うなぎ登り」。しかもその生態は謎に包まれている。食食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が考える「うなぎ」論。

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 土用の丑の日を間近に控え、うなぎの周辺が騒がしい。この数年、うなぎの稚魚の漁獲量は落ち込み続け、仕入れ・小売りともに価格が高騰している。稚魚の取引価格はこの5年で約3倍に跳ね上がった。昨年と今年の成魚の出荷価格を比較しても、約4割上昇という暴騰ぶりだ。

 その結果、低価格がウリの牛丼チェーンの「うな丼」は各社とも100円の値上げを余儀なくされた。うなぎ専門店などではランチメニューなどで穴子や豚肉のかば焼きメニューを開発し、苦境をしのごうとしている。あまりの不漁ぶりに、アメリカ産やアフリカ産のうなぎも輸入されているが、その評価は決して高いとは言えない。

 日本人とうなぎの付き合いは長い。古くは風土記や万葉集にも登場するばかりか、太平洋沿岸部を中心に、約5000年前の縄文時代の遺跡からもうなぎの骨は発掘されている。だが、長きにわたって、その生態は謎に包まれてきた。これほどまでに長い付き合いにもかかわらず、日本人がうなぎの生態の解明に本腰を入れはじめたのは、この40年ほどのこと。1973年、東京大学の大気海洋研究所が中心となり、太平洋のうなぎ産卵場調査をスタートさせてようやく、うなぎの生態研究は本格化した。

 以降、1986年にフィリピンのルソン島沖で、さらに1991年にマリアナ諸島近辺で、うなぎの小魚を採取したことで、ようやく産卵場所が突きとめられた。受精卵に至ってはごく最近、2009年にようやく世界初の採取に成功するほど謎に満ちていたのだ。現在までの調査で、うなぎの産卵場所は10メートル立法程度と極めて狭いとされている。産卵場所が少しでもズレると北赤道海流に乗ることができず、結果、日本での漁獲量の激減につながっているのでは、という仮説が報告されている。

 古代ギリシャの哲学者、アリストテレスですら「交尾によって生まれるのでも、卵生するのでもなく、泥や湿った土のなかから自然発生するもの」と解釈するほど、謎めいているうなぎの生態。

 その一日も早い謎の解明を待っているのは、うなぎ専門店やスーパー、牛丼チェーンだけではない。自分にパワーをくれるからという理由でファンのことを「うなぎ」と呼ぶ韓流スター、チャン・グンソクはさておき、誰よりも夏の風物詩として「土用の丑」の日にうなぎを熱望する日本中のうなぎ好きの切なる願いである。

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