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遺族敗訴の中1自殺裁判 市関係者「遺書にいじめ記載ない」

 日本中に波紋を呼んでいる大津市の中2いじめ自殺事件。この事件と時を同じくしてクローズアップされたのが、埼玉県北本市の中井紳二さん、節子さん夫妻が国と北本市を相手に起こしていたいじめ自殺訴訟だった。

 7月9日、東京地裁はこの訴えを棄却し、両親は敗訴した。クラスにいじめがあったことすら認めてもらえない、厳しい判決だった。

「いじめの証言をもっと集められていれば…。学校や教育委員会が真相を明らかにしてくれると思って信じて待っていた私たちがバカでした」

 と、節子さんはつらい経験を振り返る。7年前の2005年10月、中学1年生だった一人娘の中井佑美さん(当時12才)は、北本市の自宅から1.5km離れた8階建てマンションの屋上から飛び降り自殺した。佑美さんの机の引き出しには、一通の手紙が遺されていた。そこには「お母さんへ」と題して、お別れのメッセージが綴られていた。遺書だった。

<生きるのにつかれました>
<死んだのは(中略)クラスの一部に勉強にテストのせいかも>

 佑美さんの父・紳二さんは遺書の内容をすぐに学校へ相談。佑美さんがクラスでいじめを受けていたのか、学校の対応を1週間待ったが一向に連絡はなかった。それどころか、学校は自殺の件を腫れ物に触るように扱い、校内ではうやむやにしようとしていたという。

「佑美が亡くなった翌日、学校は朝礼を行ったんですが、誰がどうして亡くなったということを一切何も話さなかったようなんです。佑美の名前も出さない。同級生の保護者でも、佑美が亡くなったことを知らず、葬儀に間に合わなくなりかけた人もいます」(紳二さん)

 その後、夫婦が北本市の市長のもとへ真相究明の陳情に行くと、学校と市教委は突如あわてたような対応になった。佑美さんの死から2週間後、市教委はようやく調査を行うことを夫婦に告げたが、その内容は形式的なものだった。

「クラスメートに行ったアンケートでも、佑美の名前は出てこないんです。『学校に来るのは楽しいですか』『何か心配なことはありますか』と生徒自身のことを問う内容で、これではいじめの話なんか出てきませんよ。真実を明らかにしようという姿勢がまるで感じられませんでした」

 納得せず、夫婦は自ら同級生たちに聞き取りをすすめ、佑美さんが「うざい」「きもい」といわれたり、内股歩きをからかわれたり、上履きを隠されたりしていたことを突き止めた。

 しかし、それを受けても学校側は「いじめはなかった」と断定。前述のように裁判で争われることになったのだ。紳二さんの後悔は、学校や教師を疑ってかからなかったことだ。

「大津のいじめでも全く変わっていないと思いましたけど、学校や教育委員会は真実を隠そうとする。彼らを頼らず、子供たちの反省の気持ちが薄れないうちに、もっと自分たちで聞き取り調査をしていれば違った結果になったと後悔しています」(紳二さん)

 一方、北本市教育部の担当者はこういう。

「遺書には『クラスの一部』とあるだけで、決していじめとは書いてありません。(裁判では)市の主張が認められたことになります」

 夫妻は控訴する予定だという。

※女性セブン2012年8月2日号

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