スポーツ

甲子園常連校はユニフォームの着こなしも勝利に結びつける?

 球児たちの汗と涙だけでは、勝利の女神は微笑まない。球場をいかに味方につけるか、アルプススタンドの声援をいかに呼びこむか。青春甲子園の舞台裏を覗いてみると、“策士”たちの知略が張り巡らされていた。ノンフィクションライターの柳川悠二氏がレポートする。<文中敬称略>

 * * *
 花巻東(岩手)には、試合前に行なう神聖な儀式がある。

「花巻東、7分間の練習を開始してください」

 ウグイス嬢によるアナウンスが流れると、ナインが全力疾走で散らばり、ノッカーを務めるコーチの松田優作が、オーバーアクションで鋭いノックを放つ。7分の締めくくりは、花巻東オリジナルのボール回しだ。内野手が声を張り上げ、ダイヤモンド内に2つのボールを交叉させながら、勢いよくボールを回していく。

 2009年に菊池雄星を擁して準優勝を果たし、今年は最高速160キロの怪物右腕・大谷翔平がマウンドに君臨する花巻東は、今夏の出場こそ叶わなかったが、ここ数年で最も甲子園を沸かせてきたチームだろう。花巻東野球を象徴するのは、菊池や大谷ら“個の力”ではなくシートノックとボール回しである。松田が明かす。

「ボールを2つ同時に回すのは全国でもうちだけ。試合に向けた気持ちを高めると同時に、控え選手はこのボール回しがやりたくてベンチ入りを目指すんです」

 花巻東の「2ボール回し」は、いまや甲子園名物となった。同校には試合中にも名物がある。一塁への極端な全力疾走だ。たとえ完全にアウトのタイミングでもスピードを落とさずベースを駆け抜け、さらにライト線に沿って全力疾走を続ける。球児たちの懸命な姿を“魅せる”ことで甲子園を埋めた高校野球ファンを花巻東ファンへと誘うのだ。

「結果として甲子園を味方につけることにつながればと思っています」(同前)

 野球留学全盛のこの時代に、とりわけ東北圏には大阪第2代表のような高校があふれている中、全選手が地元出身というのも、花巻東が好感を抱かせる要因だ。現在、週刊ヤングマガジンで『砂の栄冠』を連載する漫画家の三田紀房は、実際に足繁く甲子園に通い取材を行なう中で“観客をいかに味方に付けるか”を作品の裏テーマとした。

「ユニフォームを格好よく着こなすのも、観客を味方にする一つの手です。PL学園(大阪)は伝統的に袖が短いユニフォームを着て、身体が逆三角形に見えるように着こなす。ものすごくスタイリッシュに映りますよね。中京大中京(愛知)のようにワンサイズ小さいユニフォームを着て太股をパンパンに見せる着こなしもいいし、鹿児島実業(鹿児島)のようなクラッシックスタイルも野球ファンの心をとらえます」

※週刊ポスト2012年8月10日号

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン