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金正恩の北朝鮮「ミャンマーになるかも」との観測ありと識者

“ならず者国家”とどう向き合うか――。金正恩政権下の北朝鮮には変化の兆しも見受けられる。拉致問題をめぐって対立を続けてきた日朝関係が新たな局面を迎えようとしている。ジャーナリスト・富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 日本政府と北朝鮮の政府間交渉が再開される見通しとなった。日朝協議は福田政権下で途絶えて以降4年ぶりということで、8月15日付の全国各紙は、一面でこのニュースを大きく報じた。

 日朝協議が滞って4年と聞いて長いと感じるか短いと感じるかは個人差のあるところだろうが、日朝関係に進展が見られないという意味ではかれこれ10年にもなる。小泉首相の電撃訪朝から一気に動き出すかに思われた日朝関係が、拉致被害者の問題で暗礁に乗り上げてしまってからというもの、双方は顔を合わせる度に拉致問題をめぐって出口の見えない応酬を繰り返してきたからである。

 今回、日朝協議が再開に向かったのは日本側が北朝鮮に非公式ルートを通じて働きかけてきた成果だろう。2008年以降頑なに「政府との接触はしない」としてきた北朝鮮の態度に変化が現れたのは、金正日の死から金正恩体制への権力継承が大きな混乱もなく進んだためとも考えられる。

 金正恩体制になって以降の北朝鮮はミサイル実験などはやったものの、基本的には経済発展を重視し西側社会にも歩み寄りのシグナルを発し続けている。

 既にNEWSポストセブンで何度も書いてきたようにAP通信の支局開設やその直後の要人インタビューで経済改革の必要性を強調する発言が見られるなど北朝鮮の変化は顕著だった。(金正恩体制は)「半年持たない」、「1か月で崩壊」といった観測記事が乱立するなか、北朝鮮が経済発展する可能性にも言及し続けてきたのだが、その裏側には西側先進国にとって北朝鮮が、世界からの投資が集中するある種の「ミャンマー」的な存在になるのではとの観測もあるからだ。

 これまで世界経済をけん引してきた新興国の成長にも陰りが見え始め、市場に渦巻く資本は未開の地を求めている。その一方で北朝鮮の若い政権は権力の正統・正当性を担保するためにも国民生活の向上、いわゆる経済成長を志向しなければならない。つまり、外国資本やノウハウを利用するメリットを感じているのである。

 日朝交渉再開のめどが報じられたのと同じ時期、北朝鮮の張成沢は中国を訪問していた。金正恩の露払いとしての訪中であることは間違いなく、金正恩の訪中が近いことを示唆している。そこで中国が徹底して北朝鮮の経済発展をサポートする姿勢を打ち出し、米朝協議の進展を支持すれば、流れは一気に動き出すとのシナリオも予測されるのだ。

 こうしたなか日本は日朝協議再開に際し、相変わらず「拉致問題」を強調し、日朝交渉のメインテーマであるかのような説明を続けているが、同じように水かけ論で終わるのならば交渉する意味はあるのだろうか。国内的なパフォーマンスも結構だが、そろそろこの10年を無駄にした対北朝鮮外交を総括するときである。いさましい対外強硬論が「拉致問題にどんな進展をもたらしたのか」、真剣に問われるべきだろう。

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