国際情報

習近平氏 尖閣問題でレアアース供給停止や日系企業に圧力も

 野田佳彦・首相が沖縄県の尖閣諸島の国有化方針を明言したことで、中国人民解放軍を中心に、日本に対して武力行使を求める言動が公然化している。いま、中国国内で何が起きているのか、チャイナ・ウォッチャーのウィリー・ラム氏がレポートする。

 * * *
 中国軍内で気になる動きが出ている。中国軍が5月下旬、戦闘機なら尖閣諸島まで12分という福建省沿海部に軍用基地をほぼ完成させたという。米国防総省が軍事衛星で確認しており、新型戦闘機「殲10(J-10)」や「Su-30(スホー30)」、無人攻撃機「S-300長距離地対空ミサイル」などが配備されている模様だ。

 台湾軍関係者は、尖閣問題など「東シナ海有事」に備えた最前線基地との見方を示している。

 これがただちに尖閣への軍事力行使に結びつくとは限らないが、次期最高指導者と目される習近平・国家副主席は胡錦濤・主席や江沢民・前主席と違って軍部を権力基盤としているだけに、軍の意向に流されやすい。少なくとも軍側からはそう期待されている。

 習氏は今後、「軍事カード」をちらつかせながら、「経済カード」や「政治カード」を切ってくるだろう。経済カードは日本が中国に依存しているレアアースの供給を停止することや中国の日系企業に圧力をかけること。環球時報によると、そうした措置は国民の80%が支持しているという。

 中国はベトナムなどと領有権を争う南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島など3諸島を「三沙市」に格上げすると発表しているが、尖閣問題でも同じような「政治カード」を使ってくる可能性は否定できない。

 中国軍は6月下旬、広東省に配置していた巡航ミサイル部隊を南シナ海の島々を管轄する海南省に移動させたとの情報がある。これなどは政治・軍事カードの併用だ。秋の党大会を控え、習氏は共青団閥との権力闘争に勝利するためにも、日本に対してさまざまなカードを切ってくるに違いない。(翻訳・構成/相馬勝)

※SAPIO2012年8月22・29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
高校時代には映画誌のを毎月愛読していたという菊川怜
【15年ぶりに映画主演の菊川怜】三児の子育てと芸能活動の両立に「大人になると弱音を吐く場所がないですよね」と心境吐露 菊川流「自分を励ます方法」明かす
週刊ポスト
ツキノワグマは「人間を恐がる」と言われてきたが……(写真提供/イメージマート)
《全国で被害多発》”臆病だった”ツキノワグマが変わった 出没する地域の住民「こっちを食いたそうにみてたな、獲物って目で見んだ」
NEWSポストセブン
2020年に引退した元プロレスラーの中西学さん
《病気とかじゃないですよ》現役当時から体重45キロ減、中西学さんが明かした激ヤセの理由「今も痺れるときはあります」頚椎損傷の大ケガから14年の後悔
NEWSポストセブン
政界の”オシャレ番長”・麻生太郎氏(時事通信フォト)
「曲がった口角に合わせてネクタイもずらす」政界のおしゃれ番長・麻生太郎のファッションに隠された“知られざる工夫” 《米紙では“ギャングスタイル”とも》
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン