国内

防災拠点として使われる人工島に「危険極まりない」と専門家

防災拠点としての安全性は?(マリンポートかごしま)

 関東から九州まで、津波に逃げ遅れる人を中心に死者32万3000人――M9.0の南海トラフ巨大地震が真夜中に起こった時の被害想定だ(8月29日、中央防災会議と内閣府の検討会の発表)。

 市町村域や都道府県域を超える規模の災害が起こった時、応急復旧活動や救援物資輸送の拠点となるのが、ヘリポートなどを備えた『広域防災拠点』だ。約30の都府県で整備され、設置を検討中の県も多い。また、さらに広域に及ぶ甚大な災害が起こった際、国と自治体が協力して活動するための施設が『基幹的広域防災拠点』であり、首都圏と京阪神都市圏に整備されている。

 防災拠点はいわば復旧、救援活動の“前線基地”となり、地震大国ニッポンにとって欠かせないものなのだ。しかし取材を行なうと、その多くが、津波による甚大な被害が予想される臨海部にあることがわかった。

 掲載した写真をご覧いただきたい。これは鹿児島湾内、桜島の西南方向に位置する「マリンポートかごしま」という人工島だ。県によってすでに、多目的広場などが造られ、さらに将来は広域防災拠点にすべく整備が進められている。一時的な避難所、仮設住宅建設後の生活場所としても検討されているという。

 これに対して、鹿児島大学大学院准教授の井村隆介氏(地質科学)は以前から、「人工島を防災拠点として使うのは危険極まりない」と批判してきた。東日本大震災直後には県議会でも安全性が問題にされた。理由は一目瞭然。湾にせり出した地形ゆえ、津波に襲われたらひとたまりもなく、陸地との唯一のアクセスとなっている道路が使えなくなれば孤島と化すからだ。

「プロジェクトが始まったのはバブル経済の頃で、当初は防災拠点にする構想はありませんでした。ところが、バブルが弾け、開発計画が行き詰まりかけた時、県が防災拠点構想を持ち出したのです。『防災』を旗印にすれば予算が通りやすいですから」(井村氏)

 鹿児島県土木部港湾空港課は本誌の問い合わせに対して回答を拒否。危険をどう認識しているのだろうか。

■「マリンポートかごしま」のデータ
【土地】埋め立て地
【海抜】回答拒否
【主要施設の高さ】回答拒否
【海(湾)からの距離】0メートル
【想定津波】3メートル(南海トラフ巨大地震。中央防災会議)
【津波に対して】回答拒否
【回答】鹿児島県土木部港湾空港課

撮影■太田真三

※週刊ポスト2012年9月14日号

関連記事

トピックス

日米通算200勝を達成したダルビッシュ有(時事通信フォト)
《ダルビッシュ日米通算200勝》日本ハム元監督・梨田昌孝氏が語る「唐揚げの衣を食べない」「左投げで130キロ」秘話、元コーチ・佐藤義則氏は「熱心な野球談義」を証言
NEWSポストセブン
ギャンブル好きだったことでも有名
【徳光和夫が明かす『妻の認知症』】「買い物に行ってくる」と出かけたまま戻らない失踪トラブル…助け合いながら向き合う「日々の困難」
女性セブン
破局報道が出た2人(SNSより)
《井上咲楽“破局スピード報告”の意外な理由》事務所の大先輩二人に「隠し通せなかった嘘」オズワルド畠中との交際2年半でピリオド
NEWSポストセブン
河村勇輝(共同通信)と中森美琴(自身のInstagram)
《フリフリピンクコーデで観戦》バスケ・河村勇輝の「アイドル彼女」に迫る“海外生活”Xデー
NEWSポストセブン
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
《私の最初の晩餐》中村雅俊、慶応大学に合格した日に母が作った「人生でいちばん豪勢な“くずかけ”」
女性セブン
『君の名は。』のプロデューサーだった伊藤耕一郎被告(SNSより)
《20人以上の少女が被害》不同意性交容疑の『君の名は。』プロデューサーが繰り返した買春の卑劣手口 「タワマン&スポーツカー」のド派手ライフ
NEWSポストセブン
ポジティブキャラだが涙もろい一面も
【独立から4年】手越祐也が語る涙の理由「一度離れた人も絶対にわかってくれる」「芸能界を変えていくことはずっと抱いてきた目標です」
女性セブン
生島ヒロシの次男・翔(写真左)が高橋一生にそっくりと話題に
《生島ヒロシは「“二生”だね」》次男・生島翔が高橋一生にそっくりと話題に 相撲観戦で間違われたことも、本人は直撃に「御結婚おめでとうございます!」 
NEWSポストセブン
木本慎之介
【全文公開】西城秀樹さんの長男・木本慎之介、歌手デビューへの決意 サッカー選手の夢を諦めて音楽の道へ「パパの歌い方をめちゃくちゃ研究しています」
女性セブン
大谷のサプライズに驚く少年(ドジャース公式Xより)
《元同僚の賭博疑惑も影響なし?》大谷翔平、真美子夫人との“始球式秘話”で好感度爆上がり “夫婦共演”待望論高まる
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
男装の女性、山田よねを演じる女優・土居志央梨(本人のインスタグラムより)
朝ドラ『虎に翼』で“男装のよね”を演じる土居志央梨 恩師・高橋伴明監督が語る、いい作品にするための「潔い覚悟」
週刊ポスト