ライフ

歯垢沈着で女13.1歳、男8.6歳の寿命短縮「皆歯が命」と医師

 白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏が、歯垢と寿命の関係について解説する。

 * * *
 歯垢(しこう)とは、細菌が凝集して形成されたビオフィルム(菌膜)であり、歯の表面に沈着する。歯垢が沈着すると歯肉炎を引き起こし、最終的には歯の損失に至る。

 歯垢は、動脈硬化に関与することも知られている。動脈硬化病変に歯周病菌が検出される一方、歯垢の治療をすることで動脈硬化病変が改善するという報告もある。そんな中、歯垢に関する新たな研究結果が注目されている。

 スウェーデン・ストックホルムのカロリンスカ研究所歯学部門のビルジッタ・セーデル博士は、明白な歯周病が認められなかった30歳~40歳のストックホルム在住の健常な男女1390人を対象に、1980年代半ばから24年間にわたって歯垢の沈着や歯周病の程度と死亡率の関係を長期的に追跡調査した。

 2009年までに1390人中58人が亡くなったが、セーデル博士が生存者と死亡者の歯垢の沈着状況を調査したところ、死亡者には歯茎が歯垢で覆われている症例が多かったのに対して、生存者の歯垢は部分的な沈着である症例が多かった。この調査で歯垢沈着の程度と死亡率の間に明らかな関連性が見いだされたという。

 さらに、死亡した女性の平均年齢は61.0歳、男性の平均年齢は60.2歳で、スウェーデンの統計データによる標準余命と比較した結果、歯垢沈着を認める女性では13.1歳、男性では8.6歳も寿命が短縮している計算となった。

 死亡した58人中、がんに罹って亡くなった人は35人におよんだ。死因となったがんは、女性では乳がんが最も多かったが、男性では前立腺がんや悪性黒色腫、消化器がん、肺がんや脳腫瘍など様々ながんが報告された。

 これらのがんの発症に歯垢がどのように影響しているのかは、この調査研究では結論が出なかったが、セーデル博士は「感染症や炎症が全悪性腫瘍の15~20%に関与することから、歯垢が口腔や全身の感染症や炎症を引き起こし、がんの発生率を上げている」可能性を指摘する。歯垢が脳の機能低下や動脈硬化、がん発症にも関与するとなると、やっぱり皆「歯がいのち」なのである。

※週刊ポスト2012年10月12日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン