国内

家田荘子 尼崎事件に「主犯から“恐れ”が伝わってこない」

 ヤクザの世界に生きる妻たちを描いた映画シリーズ『極道の妻たち』。その原作者で作家・僧侶の家田荘子さんは執筆時、暴力団幹部の自宅に居候して裏社会の取材を重ねた。

「組同士の抗争にかかわった人たちにインタビューしましたが、殺人に及ぶ際は全身ががたがたと震え、手の震えが止まらなかったという人や、犯行後も恐ろしさや良心の呵責で苦しみ抜いたという人がいました。命令を下しながらも、『いつバレるか』という恐怖感で眠れなくなった幹部もいました。彼らでもそうなのに、“あの事件”の主犯からは“恐れ”が伝わってきません」

 家田さんが驚愕する“あの事件”とは、兵庫県尼崎市を拠点に発覚した連続変死事件のこと。主犯と見られる角田美代子被告(64才)は警察の取り調べに完全黙秘を続けている。犯行は1980年代から始まったとされるが、その間20年以上も平然と暮らしており、脅えや恐怖心とは無縁だったようだ。

 死者・行方不明者は少なくとも8人にのぼり、奪い取った金品は1億円以上。標的にした家族をとことんしゃぶりつくし、用済みとなれば躊躇なく命を絶つ。そして、次の獲物に向かう──人間とは思えない罪悪感のなさこそが、今回の事件の最も不気味な点である。

 角田被告が知人の大江和子さん(享年66)の死体遺棄容疑で逮捕されたのは昨年11月末だった。なぜ1年前の事件が今になってクローズアップされているのか。

「最初は大江さん1人が被害者と考えられていました。しかし、その後、角田被告に近い関係者が『数人の遺体がある』と証言。今年10月に尼崎市の民家から3人の遺体が見つかり、芋づる式に事件が拡大しています」(全国紙社会部記者)

 疑惑の中心に立つ角田被告から被害者と加害者をつなぐ回路が複雑に広がり、捜査本部でさえ未だ全体像をつかめていないとされる。事件関係者は100人前後に達するという。

 角田被告のルーツは終戦直後に遡る。1948年、尼崎市で左官工を営む家庭に生まれた。地元では札付きのワルとして知られ、中学時代には背中に“ドス(短刀)”を持って登校してきたこともあったという。当時の担任Aさん(85才)が語る。

「中3になるとき、どの先生も彼女のクラス担任を嫌がるほど“ごんたくれ”(やんちゃ者)で有名でした。本人いわく父親は遊郭に入り浸っていたそうで、母親も“娘は言うこと聞かんから”の放任主義。素行が悪いため何回か更生施設に預けられていました。そこを脱走し、トラックをヒッチハイクして尼崎に戻ってきたこともありました」

 手のつけられない暴れん坊だった一方、Aさんは報道ではうかがい知れない角田被告の顔も見ている。

「あるとき、“お前は! また遅刻か!”って言うて、一発ほっぺたをバチンとどついたんです。そしたら“親にもどつかれたことないのに、先生はようどついてくれた”って言うて、下向いて反省してました。親の愛情を受けずに育った子なんやな、という印象を持ちました」(Aさん)

 角田被告は中学卒業後、私立高校に入学するも一学期で中退。10代後半にして尼崎市内でスナックを経営し売春あっせん業にもかかわった。その後、神奈川県横浜市に居を移し、市内の繁華街で水商売を始めた。後に角田被告の戸籍上の妹となり、共に犯罪を重ねる角田三枝子被告と出会ったのはこの頃のことだ。

 1980年前後に尼崎に戻った“角田ファミリー”は、後に角田被告の右腕として暴虐を尽くす李正則受刑者(38才)らを加えて、犯罪史上類を見ない凶悪犯罪に手を染め始めた。

※女性セブン2012年10月15日分

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
水原一平容疑者の半生を振り返る(C)BACKGRID,Inc/AFLO
《現地レポート》水原一平容疑者「中学時代は帰宅部」同級生が口を揃える“影の薄さ”「騒いでるのをそばで見ているタイプ」「高校の同窓会には不参加」
週刊ポスト
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
女性セブン