国内

野田政権が尖閣に自衛隊派遣は国民を危険に晒すだけとの指摘

 野田佳彦首相が尖閣諸島の国有化を発表した後の9月中旬、中国が尖閣上陸部隊を編成し、人民解放軍の工兵を漁民に偽装させて漁船に乗り込ませる準備をしている可能性があるという情報が首相官邸にもたらされた。

 工兵部隊を送り込むとなれば、海上保安庁では手に負えない。野田首相は自衛隊を尖閣に派遣する準備をさせるよう内々に指示したという。外務、防衛両省の上層部は首相の姿勢に驚愕し、聞きつけた岡田克也・副総理が即座に「それだけはやってはいけない」と正式な指示が出る前にストップをかけたといわれ、「自衛隊尖閣派遣命令」は幻に終わった。

 尖閣に自衛隊を出すというのは国民生活にそれだけ深刻な影響が予想されるから、岡田氏のように反対論が出るのは当然と言えば当然で、反対することが悪だとは言えない。

 だからといって、政治が最初から自衛隊出動というカードを放棄すれば、中国側と折衝さえできない。元レバノン大使の天木直人氏は「政治家の覚悟」についてこう語る。

「中国はいずれかの時点で、実力行使で尖閣を取りに来ると考えておくべきです。その時に日本の政治家が自衛隊で対抗すれば、武力衝突に至る可能性は否定できない。

 心配なのは、政治家も官僚もそのリスクをどう回避するかを真剣に考えて発言しているとは思えないことです。領土を守れという世論のムードに乗って自衛隊を出せと言うのは容易だが、その裏では戦争を回避して国民の生命を守るために二重三重の備えをするのが政治家の覚悟であり責任です。

 野田首相は外交的見通しがあまりにも甘く、尖閣を国有化する際、ここまで事態が悪化するとは考えていなかった。だから最悪の場合への備えが何もなかった。こんな政治家に自衛隊出動を判断させるのは危険すぎる。

 外務省も同じ。佐々江賢一郎次官(当時)は尖閣国有化に『中国が反発する』と忠告したとされる。そう考えたのであれば、職を辞す覚悟で総理を止めるのが外交官としての責務なのに、まるで評論家みたいに口で言うだけだった。政治家も外務官僚も国を守る能力と意識が非常に劣化している。そんな政権が安易に自衛隊派遣するなど国民を危険にさらすだけです」

 そう考えれば、国民を守る覚悟も、外交的見通しも、最悪のケースへの備えもない野田政権には、そもそも「尖閣出兵」で自衛隊を使う外交的能力も資格もないと言える。 「開戦」という重大な決断を下すには、“雑音”に惑わされずに判断ができ、かつ戦争の怖さを理解したリーダーを持つことそうした前提を整えなければ、いくら自衛隊の戦力が優れていても、中国に対抗することはできない。  

※SAPIO2012年12月号

関連キーワード

トピックス

ラブホテルから肩を寄せ合って出てくる小川晶・群馬県前橋市長
《ラブホ通いの前橋市長》公用車使用の問題点 市の規定では「プライベートでの途中下車は認めず」、一方秘書課は「私事の送迎も行っている」と回答
週刊ポスト
(公式HPより)
《論戦が繰り広げられる自民党総裁選》投票権はなくても楽しむ5つのコツ「メディアのスタンスにケチをつける」も?石原壮一郎氏が解説
NEWSポストセブン
小川市長名義で市職員に宛てたメッセージが公開された
《メッセージ画像入手》“ラブホ通い詰め”前橋・42歳女性市長「ご迷惑をかけた事実を一生背負う」「窓口対応など負担をかけてしまっている」職員に宛てた謝罪文
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
司忍組長も“寵愛”する六代目山口組「弘道会」の野内正博・新会長の素顔 「けじめつけるために自ら指を切断して…」
NEWSポストセブン
地区優勝を果たした大谷と、支えた真美子さん
《大谷翔平のポルシェに乗ってお買い物》真美子さんがシーズン終盤に取り寄せた“夫の大好物”、試合後は一目散に帰宅でくつろぐ「安心の自宅」
NEWSポストセブン
“健ちゃん”こと辛島健太郎役を務めた高橋文哉(写真提供/NHK)
《朝ドラ『あんぱん』》健ちゃん役・高橋文哉が明かす役作りの裏側 常に意識していた「メイコちゃんが好きでいてくれるには、どうお芝居で向き合うべきか」
週刊ポスト
秋場所12日目
波乱の秋場所で座布団が舞い、溜席の着物美人も「頭を抱えてうずくまっていました…」と語る 豊昇龍と大の里が優勝争い引っ張り国技館の観戦にも大きな異変が
NEWSポストセブン
新安諸島は1004つの島があることと、1004の発音が韓国語で「天使」と同じことから天使と絡めたプロモーションが行われている(右:共同通信。写真はイメージ)
「島ではすべてが監視されている」韓国人が恐れる“奴隷島”に潜入取材 筆者を震撼させたリアルな“評判”
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左・Facebookより)
《「苦しい言い訳」と批判殺到》前橋・42歳女性市長が既婚男性と“ラブホ通い詰め” 弁護士が解説する「打ち合わせだった」が認定されるための“奇跡的な物証”とは
NEWSポストセブン
都内在住の会社員・馬並太志さん(インスタグラムより)
《山頂になぜピザ配達員?》ビールの売り子、寿司職人、パティシエ…登山客の間で大バズりしている“コスプレ登山家”の正体とは
NEWSポストセブン
「第50回愛馬の日」に出席された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年9月23日、写真/時事通信フォト)
《愛馬の日ご出席》愛子さま、「千鳥格子のワンピース×ネイビーショート丈ジャケット」のセンス溢れる装い ボーダーや白インナーを使った着回しテクも
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左・Facebookより)
《「打ち合わせ」していたラブホ内部は…》「部屋の半分以上がベッド」「露天風呂つき」前橋・42歳女性市長が既婚の市幹部と入ったラブホテルの内装 
NEWSポストセブン