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肺がん 検診した人の方が発見多いが死亡数は放置者が少ない

 日本人の死因のトップは、がんである。 現在、厚労省は罹患者が多いがんのうち、がん検診を受けることで死亡率が20~60%も減少することが科学的に示されているとして、5つのがん検診(肺、大腸、胃、乳、子宮頸)を推奨している。厚労省のアンケートによると、過去1年間に何らかのがん検診を受けた人がいる世帯は現状20~30%程度だ。今年度中に受診率50%にすることが目標だという。

 しかし、世界を見渡すと、この5つのがん検診すべてを実施している国は少ない。大腸がんは国際的にも根拠が認められて多くの国が検診を実施しているが、胃と肺の検診に関しては、日本以外で胃は韓国だけ、肺もハンガリーだけというのが現状だ。

 厚労省は、これら5つのがん検診すべてに効果を示す証拠があるというが、海外では、実証研究によって「効果なし」と指摘しているケースが少なくない。

 医療の有効性を証明する方法としてもっとも信頼度が高い検証方法は「無作為化比較試験(RCT)」だ。海外ではがん検診もこの方法で検証され、有効性が疑問視される結果が相次いでいる。

 研究対象となる人々を無作為に選び、検診群と放置群の2つの集団に分け、罹患率や死亡率などを比較する。検診群は定期健診でがんが見つかるが、一方の放置群はがんが進行して症状が出ないと見つけられない。というと、日本人の“常識”なら前者のほうが死亡率は低いと考えるのが普通なのだが……。『患者よ、がんと闘うな』(文春文庫)などの著書がある、慶應義塾大学医学部放射線科講師の近藤誠氏が解説する。

「まず、肺がんに関しては、1986年に9000人を対象に行なわれたアメリカのメイヨークリニックの検証が有名です。結果は、発見された肺がんの数は検診群が勝りましたが、肺がんによる死亡数は放置群のほうが少なかった。1990年にチェコスロバキアでも6300人の喫煙男性に対して検証がされ、同様の結果が得られました。なお、肺がんによる死亡数は放置群が47人だったのに対し、検診群は64人でした。

 死亡数が増えた理由は、手術の後遺症で亡くなった、健康という検診結果に安心してタバコを余計に吸ってしまった、などが考えられます。いずれにせよ、無症状ならば放置していても問題ないということです」

※週刊ポスト2012年11月30日号

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