芸能

芝居うまい武井咲のドラマが低視聴率なのは「謎」と女性作家

 武井咲が2012年を代表する女優のひとりであることは論をまたないだろう。だが、露出度のわりに“実績”がついてきていないのもまた事実。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が分析する。

 * * *
 以前にも増して、テレビドラマに大きな注目が集まっている今。きっかけはやはり、去年の『家政婦のミタ』(日本テレビ)にあるのでは。サッカー中継でさえなかなか到達できないお化け数字「視聴率40%」を叩き出し、世の中を震撼させた。テレビドラマに、未知の可能性が潜んでいることを見せつけてくれました。

「ミタ現象」の後、ドラマの視聴率に関してはいろいろと話題が。

 例えば低視聴率の「家族のうた」(フジ系)が打ち切りになったり、NHK大河の「平清盛」が史上最低視聴率を記録など。そして最近の話題は……やっぱり武井咲主演のドラマ視聴率でしょう。主役にひっぱりだこの彼女が、なぜか「低視聴率女王」などという不名誉な称号がつけられそうな危機に瀕しているのですから。

 前クールのドラマ『息もできない夏』(フジ系)も1桁台が続き、今放送中の『東京全力少女』(日本テレビ系)も初回9.0%。その後もふるわず5.4%まで数字を下げ、今も1桁台をウロウロ。「大丈夫か」の声がわき起こっています。

 どんなにつまらんのだろうかと、『東京全力少女』に恐る恐るチャンネルをあわせてみると。

 これが……予想に反して面白い!出来がいい!テンポよし、配役よし、筋立てよしで、モタモタした説明的セリフなし。

 このドラマの特徴はまず場面が目まぐるしく、くるくる切り替わること。親子の暮らし、夜のクラブ世界、外国人のいる下町のシェアハウス、動物園、温泉旅館……速度感と雑多性に満ちた場面展開が続きます。

 そうしたシーンのつながりあわせすべてが、実は雑多な大都会「東京」を作り上げている特徴と、響きあい重なりあっている。『東京全力少女』というタイトルどおり、「東京」が明快なテーマとなってドラマ全体でよく表現されているのです。

 演出の技巧もふるっています。目の瞬きに「ピコピコ」、走る時に「ビューン」と劇画チックな音をあえて加えている。それによって、フィクション世界のエッジを立てているのです。

 そして主役の武井咲は……難しい役割を絶妙にこなしているではありませんか。役柄は田舎出の少女であり、かつ、都会のクラブのホステスで、父親を幸せにしようとする娘で、何にでも全力で立ち向かう純粋な少女。いわば万華鏡のような複数の役割を、一人で飄々と演じきっている。

 そういえば、前クールの『息もできない夏』(フジ系)では戸籍が無い悲劇のヒロイン役を、こちらは実にシリアスに演じきっていました。「良家のお嬢様」から「悪女」まで演じる幅。とても18歳とは思えません。

 ではいったいなぜ? そんな武井咲主演のドラマが、こうも低視聴率続きなのか?

 謎です。

 そしてもう一つの謎が。ドラマばかりか20社近くのCMに登場する彼女の人気が、決して高く評価されていないという謎。好感度調査といわれる「テレビタレントイメージ調査」(2012年8月)でも、「武井咲」の名前は50位内に見あたらなかったのです。

 解けない2つの謎。果たしてテレビドラマファンのみなさんは、どうお考えになるでしょうか?ぜひその答をご教示いただきたいところです。

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