国内

自民党憲法改正草案の通りなら反原発官邸デモが規制される?

 自民党の大勝で、憲法改正が具体化し始めた。かつて衆議院300議席を獲得して第三次内閣を組閣した改憲派の中曽根康弘氏でも手を付けられなかった「自民党の悲願」がどうなるか、注目される。フリーライターの神田憲行氏は「いまこそ憲法を読もう」と語る。

 * * *
 選挙戦が始まると同時に憲法問題は原発、消費税などともにSNSで取りざたされた。朝日新聞がSNSを駆使して取材する「ビリオメディア(仮)」での「総選挙に関するつぶやき調査」でも、憲法問題は一貫して大きなボリュームを占めていた。さらに各種世論調査でも「憲法改正・見直し」と回答する者が過半数を超えた。背景に尖閣諸島・竹島という領土問題と9条の関係があるのは間違いなく、ここは中曽根政権時代と大きく違う。憲法改正がより現実化しているといえよう。

 そこで焦点になるのは、自民党が4月27日に掲げた「日本国憲法改正草案」である。ツイッターでは女性国会議員の人権規定に対する「つぶやき」が物議を醸し、ネット上ではさまざまな「評価」が下されている。ここではそうし議論の中で、私が目にしなかった2点について考えたい。

 まずひとつは「改正草案」は、そもそも、「憲法改正の限界」を越えているのではないか、という疑念である。憲法も一個の法律だから改正が可能であることはもちろんなのだが、そこに「限界」があるというのは、学界の通説だ。憲法論の大家である故・芦部信喜東大法学部教授の「憲法 第五版」(岩波書店)は、限界の根拠として「権力の段階構造」「人権の根本規範性」「前文の趣旨」「平和主義・憲法改正手続」を挙げている。「改正草案」は現行憲法よりかなり幅広く基本的人権の制限を認めており、この「人権の根本規範性」をどのように考えているのか、よくわからない。

 その象徴が憲法21条「表現の自由」だ。現行憲法は、

《集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保証する》

 としているが、「改正草案」は続けて2項を新設して、

《前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない》

 と制限規定を設けていることである。

「表現の自由」は「自己実現の価値」と「自己統治の価値」からとりわけ重要な権利とされ、「表現の自由」を含む「精神的自由」の制限には「経済的自由」を規制する立法よりも、とくに厳しい基準で審査される「二重の基準の理論」が通説である(芦部「憲法」)。しかし「改正草案」にはそのような視点は感じられず、経済的自由の権利と同じように「公益及び公の秩序」から規制が可能になる。

「改正草案」の通りだと、毎週金曜日に官邸前に集合して原発反対をアピールすることも、「瓦礫の広域処理反対」のビラを市民が配ることも、「公益及び公の秩序を害する」と「判断した者」によって規制されるのではないだろうか。ネットでは9条の国防軍について議論が集中しているように見えるが、より国民生活に直結するのはこちらの改正である。

 とはいえ私は法律家ではなく、学生時代に勉強しただけだ。異論反論もたくさんあるだろう。「わからない」という人もいる。そこで日本国憲法をまず読むことをお勧めする。「アマゾン」で「憲法」のキーワードで検索すると、「日本国憲法」Kindle版が無料でダウンロードできる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

エプスタインと若い女性(民主党資料より)
《スケスケのセーラー服を着て膝をつき…》「エプスタイン文書」から膨大な“少女の動画”発見、資料が示す“現場での行為内容” 
NEWSポストセブン
2025年に成年式を終えられた悠仁さま
《皇族一人あたりの警備費が表に出ないワケ》悠仁さま「公務全出席」報道で「警備費」に懸念も──側衛との意外な関係 
NEWSポストセブン
女優の天野はな(左)と木竜麻生(右)(事務所HPより)
《朝ドラや大河だけじゃなかった》天野はな、木竜麻生、森田望智、伊藤万理華…NHKによる「見い出し・囲い込んで・育てる」パターンでブレイクするアラサー女優たち
NEWSポストセブン
「住吉会幸平一家特別対策本部」の看板を設置する警視庁暴力団対策課の葛城俊英課長(右)と大場俊彦管理官(時事通信フォト)
《トクリュウと暴力団》四次団体の組長クラス「上納金払えない…」で手を染めることも 「ヤクザは闇バイト禁止」も住吉会から逮捕者多数か
NEWSポストセブン
(朝鮮通信=時事)
《顔が変わった?》北朝鮮・金正恩総書記の愛娘ジュエ氏「あか抜けて、口元には上品さも」85日ぶり登場で“驚きの姿”──成長期かそれとも……バツグンの存在感を発揮 
NEWSポストセブン
秋篠宮ご夫妻と佳子さまが揃って会場を訪れるのは今年で4回目となる、花の展覧会。今年は栃木県の県花のヤシオツツジや栃木県産のカーネション、バラを使った作品をご覧になった (撮影/JMPA)
秋篠宮ご夫妻と佳子さま、花に囲まれ笑顔満開 『関東東海花の展覧会』をご鑑賞、フォトブースでは一家揃って記念撮影も 
女性セブン
1992年、黒海艦隊の取材でクリミアを訪れた(撮影/山本皓一)
《追悼・落合信彦氏》エルサレムでは銃撃に遭遇したことも… それでもなお現場取材を続けた理由「“今”を必死で生きる気持ちを忘れないでいたいから」の言葉
週刊ポスト
2025年11月、ホーコン王太子とメッテ=マリット妃
《彼女は17歳だよ。きっと楽しいと思う》ノルウェー王室激震、エプスタイン元被告と次期王妃の“黒塗り”メール――息子マリウスは“性的暴行”裁判渦中 
NEWSポストセブン
現地では大きな問題に(時事通信フォト)
《トゥクトゥク後部座席での行為にタイ現地の人々が激怒》フランス人観光客の“公開露出”に目撃者は「丸見えだった」 入国ブラックリストに
NEWSポストセブン
父・落合信彦氏の葬儀で喪主を務めた落合陽一氏
「落合信彦の息子という記述を消し続ける時代があった」落合陽一氏が明かした、父について語り始めた理由“人の真価は亡くなった時に分かる”【インタビュー】
NEWSポストセブン
本来であれば、このオフは完成した別荘で過ごせるはずだった大谷翔平(写真/アフロ)
《大谷翔平のハワイ訴訟問題》原告は徹底抗戦、大谷サイドの棄却申し立てに証拠開示を要求 大谷の“ギャラなどの契約内容”“資産運用の内幕”が晒される可能性も浮上 
女性セブン
表舞台から姿を消して約1年が経つ中居正広
《キャップ脱いだ白髪交じりの黒髪に…》「引退」語った中居正広氏、水面下で応じていた滝沢秀明氏からの“特別オファー” 
NEWSポストセブン