国際情報

習近平氏 チベット亡命政府に高官を派遣し関係改善を打診か

 チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世らチベット亡命政府と激しく対立している中国政府の高官が今年8月、亡命政府(中央チベット政府)のあるインド北西部のダラムサラを訪れ、同政府のロブサン・センゲ首相やダライ・ラマに次ぐ高僧であるカルマパ16世と会見し、ダライ・ラマの中国帰還問題などを話し合っていたことが分かった。在京のチベット筋が明らかにした。

 センゲ首相らと会見したのは中国政府傘下のアジア太平洋交流・協力基金会の肖武男・執行副主席。肖氏はもともと中国工商銀行や対外経済貿易省などで国際経済を担当しており、その後、国連の経済関連部門に出向。

 これがもとで、国連の非政府組織(NGO)、宗教理解・協力協会主席や中国社会経済文化交流協会副会長、あるいは中国チベット民族文化保護基金会副会長など宗教関係機関との関わりを深めてきた。

 同筋によると、肖氏は8月16日に行なわれたセンゲ首相との会見で、中国のチベット人居住区内でダライ・ラマの中国帰還や宗教の自由を求めて、チベット人による抗議行動や焼身自殺が絶えないことを憂慮。2009年1月以降、中断している中国政府と亡命政権との対話の再開を強調した。

 肖氏は「これは中国共産党の最高指導者の個人的な意見でもある」と述べて、肖氏がダラムサラを訪問したのも党最高幹部の強い意向が働いていることを示唆した。同筋は「この最高指導者は10月の共産党大会でトップに就任した習近平氏である可能性が高い」と明らかにした。

 肖氏はセンゲ首相との会見で、「ダライ・ラマ14世が中国に敵対したり、反中的活動を行なうのを止めて、中国共産党政権を支持するのならば、中国政府はダライ・ラマを北京に迎えて、生活をすることを歓迎するだろう」と述べたという。

 これを受けて、ダライ・ラマは習近平政権の発足に強い期待感を抱いているという。これを裏付けるように、ダライ・ラマは今年8月29日、ロイター通信との単独会見で、「中国側が自身の利益を考えて、合理的で実務的、現実的な考え方をするのならば、われわれは彼らと十分協力することになろう」と語り、中国との関係改善に強い意欲を示している。

 だが、その後も中国内でのチベット人の焼身自殺が絶えず、中国側はダライ・ラマ側が焼身自殺を政治的に利用しているなどと非難。ダライ・ラマもメディアとのインタビューで、中国の主張を批判するなど、習近平体制発足後も両者は歩み寄る気配すらみせていない。同筋は「まだ新体制が発足したばかりで、習近平もこれまでのチベット政策をすぐに変えるわけにはいかないだろう。半年後、あるいは1年後というスパンで変化を見る必要がある」と指摘する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン