国内

外山滋比古氏 日本人は好き嫌いで判断し理性的考察が苦手

 日本はGDP(国内総生産)で中国に抜かれて世界第3位となり、領土問題でもその中国や韓国に攻め立てられる。厳しい状況が続く日本の現状について、外山滋比古氏(89)は、「言わずに死ねるか!」と以下のように指摘する。
 
 * * *
 今の日本が抱える深刻な問題は「判断力の欠如」ではないだろうか。本来、物事の価値を正しく判断するためには、その中身をよく吟味し、相対する事例と比較検討しなければならない。

 ところが今の日本人は、「好き嫌い」という価値基準で情緒的に判断する傾向がきわめて強く、理性的に深く考察することができない。

 民主党に政権が交代したときも、「威張りくさった自民党を苛めてやる」という感情に突き動かされたにすぎない。今回の選挙も、ネガティブな感情の矛先が民主党に向かっただけだ。

 理性的な判断に基づかない選択、感情的な衝動で下された決定は、必ず誤った道を辿る。その選択が政治で行なわれることになれば、行きつく先は危険なデモクラシーであり、私はその点を危惧している。

【プロフィール】
●とやま・しげひこ/1923年、愛知県生まれ。東京文理科大学(現筑波大学)卒業後、東京教育大学助教授を経て、お茶の水女子大学教授、昭和女子大学教授を歴任。1983年に出版した『思考の整理学』は170万部を超え、現在も売れ続けるベストセラー。

※週刊ポスト2013年1月18日号

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