国内

『八重の桜』のキャンペーン費用3.4億円 復興予算から拠出

 復興予算が霞が関の庁舎改修から役人の福利厚生費まで流用された問題は昨年来大きく報道された。

 流用額そのものにもごまかしがある。NHKや朝日新聞など大メディアは、19兆円の復興予算のうち、被災地以外に流用されたのは「全国防災事業」と「企業の立地補助金」を合わせた約2兆円と報じているが、本誌の調査ではそんなものではない。

 例えば、復興予算からは震災で被害を受けた役所の施設改修費(官庁営繕費)に総額約137億円(2011年度)が充てられ、そのうち被災地向けの「復旧費用」は4億5000万円となっている。だが、その内容を調べると、実際に被災地で使われたのは約3600万円のいわき地方合同庁舎改修1件だけで、残りは人事院がある東京・霞が関の中央合同庁舎5号館別館の改修に充てられた。

 国土交通省の担当者は「東京も被災地です」と説明したが、施設改修費のうち被災3県に使われたのは全体の5%だ。他の復興事業でも、東京などで実施された事業が「被災地向け」と計上されたケースは枚挙に暇がない。

 つまり、2兆円どころか19兆円の大半が被災地以外で消えている可能性が高い。

 菅内閣の内閣参与を務め、復興増税の経緯を知る五十嵐敬喜・法政大学教授(公共政策)はこう指摘する。

「役人がこれだけ確信的に流用できるところを見ると、被災地の復興資金が本当に19兆円も必要だったのか疑問になる。当面の復興に必要なのは6兆円程度でよかったという経済学者の指摘もある。霞が関は最初から復興予算を大幅に水増ししていた可能性が高い。しかも、復興予算が十分余ってしまうと、決算剰余金を増税削減に回せという声が強まる。

 だから霞が関はどんどん流用して復興財源を早く使い切ろうとしているのではないか。そうすれば復興予算はまだ足りないと口実をつけて剰余金を公共事業に使える。今回の補正予算がまさにそうなっている」

 その他の復興予算流用の実態はすでに本誌が詳細に報じたのでここでは繰り返さないが、流用問題を大きく報じたNHKで、今年からスタートした大河ドラマ『八重の桜』のキャンペーン費用も、国交省の復興予算(復興調整費3.4億円)から出されていたことを付け加えておく。

※週刊ポスト2013年2月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン