ライフ

ライフラインとしての役割を果たすコンビニについて綴った書

【書評】『コンビニと日本人――なぜこの国の「文化」となったのか』(加藤直美/祥伝社/1575円)

【評者】青木均(愛知学院大学教授〈流通論〉)

 * * *
 東日本大震災。この大災害の後、私たち日本人は政治の混乱や行政の不作為を嫌というほど見てきました。「政府はいざというとき、頼りにならない」と多くの国民は感じてしまいました。

 その一方、この大災害の後に評価を上げた存在があります。それが他ならぬコンビニです。コンビニ各社が食べ物や日用品をいち早く被災地に届ける努力をしたことが、多くの国民の記憶に残っています。

 いまや、コンビニは、ガス、水道、交通網などと並ぶライフラインとして認識されています。本書は、ライフラインとして認識されるほど、日本社会に溶け込んだコンビニの姿を文化と捉え、そのさまざまな最新の取り組みを解説しています。そして、私たちの生活とコンビニ各社の戦略との関係も記しています。

 コンビニがなぜライフラインとして認識されているかといえば、食品を中心に生活必需品を扱っている、その店舗数が多く、近くにたいてい存在する、そして最先端の情報ネットワークと物流ネットワークを活用して、素早く正確に商品が供給できるからです。東日本大震災時、行政が被災地向け救援物資の供給において大混乱していた時、それを尻目にコンビニ各社は生活必需品を被災地に供給し続けました。

 また、災害時だけでなく、平時にもライフラインとしての役割を果たしています。宅配サービスや生鮮品販売などによって、近くで生鮮品を中心とした食品を買うことができない買い物弱者に対応していることがその一端です。

 本書はそんな取り組みを丁寧に説明しています。さらに,商品供給以外にもライフラインとしての役割を果たしているコンビニの姿も描いています。例えば、警察と連携し、防犯拠点になっていることです。女性の駆け込み先や高齢者の保護場として活用されているそうです。

 各種サービスの提供、インターネットとの連動など幅広く生活をカバーするコンビニ。もうコンビニなしでは、私たちは生活できないようになりつつある様を、本書は指摘してくれています。

 ちなみに、私にとってコンビニは、家族とケンカして居場所がなくなったときの時間つぶし場所です。そして、ちょっと飲み足りない時に酒を買い足す場所でもあります。

 やっぱりコンビニはライフライン…。

※女性セブン2013年2月7日号

関連記事

トピックス

懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
大の里の強さをレジェンド名横綱たちと比較 恵まれた体格に加えて「北の湖の前進力+貴乃花の下半身」…前例にない“最強横綱”への道
週刊ポスト
地上波ドラマに本格復帰する女優・のん(時事通信フォト)
《『あまちゃん』から12年》TBS、NHK連続出演で“女優・のん”がついに地上波ドラマ本格復帰へ さらに高まる待望論と唯一の懸念 
NEWSポストセブン
『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン