ビジネス

「コンビニ漫画」 漫画コーナーの5割の売り上げを占める

 コンビニの雑誌棚の横にあるコミックコーナーを見ると、カラフルな背表紙でぎっしり詰まった廉価版コミックが並んでいる。

 3月某日の都内コンビニエンスストア。夜8時を少し過ぎた頃、弁当と缶ビールを持った40代後半のサラリーマンAさんが、棚の前に現われた。しばらく物色した後、おもむろに1冊抜き取ってレジへ向かった。

「弁当を食べながら、暇をつぶすために読むには丁度いいんですよ。普通の漫画の単行本と違って見た目も雑誌っぽくて、カバーもついていないから、読み捨てしても気にならない」(Aさん)

 この後も、中高年の男性客らを中心に、廉価版コミックを買い求める客の姿が目についた。

 コンビニでしか買えないことから漫画ファンの間では“コンビニ漫画”といわれる廉価版コミック。その販売を手掛ける出版関係者が近況を明かす。

「コンビニのコミックコーナーの売り上げの5割はコミックの最新刊ですが、後の5割をこの廉価版が占めています。コンビニには書店と違って棚がなく、コミックの既刊本を置けない分、この廉価版が読者の拡大にひと役買っています。現在では、出版業界にとって貴重な“戦力”となっています」

 廉価版は一般的にはB6判の無線綴じで200ページ程度。いわゆるペーパーバックで、結構な分厚さがあるが、値段は500円前後とお手頃価格に設定されている。

 先駆けは小学館。セブン-イレブン、ローソンと組んで3社で企画し、1999年に、コンビニコミック第1号となる「My First BIG」を創刊した。当初の値段は300円。主な読者の対象はサラリーマン層で、コンセプトは「弁当とビールと漫画を買って1000円」だった。

 最初に出されたのは『ゴルゴ13』、『美味しんぼ』、『人間交差点』の3作品。いずれも『ビッグコミック』などの漫画雑誌で長期連載中の人気作品で、中でも話題性のあるエピソードが、毎回各テーマごとに選り抜かれている。

 創刊された1999年当時、欧州のバルカン半島では血みどろの民族争いとなったコソボ紛争が激化していた。そのため廉価版で最初となった『ゴルゴ13』のテーマは「vsNATO&vsARMY」として、過去の作品から関連するエピソードが収録された。紛争地でのNATO軍による民間人をも標的とした空爆直後だった。

“元祖”であるこの3作品は、現在でも根強い人気となっている。

※週刊ポスト2013年3月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン