ビジネス

業界紙記者が語る“試食でメタボ”“記者クラブ門前払い”の苦労

 特定業界のネタ集めに日々勤しむ業界紙記者には、大手紙記者とは異なる苦労がある。4人の業界紙記者が、“業界紙業界”の内部事情を語り合った。

【座談会参加者】
A氏:(40代・金融業界紙)
B氏:(30代・運輸業界紙)
C氏:(50代・食品業界紙)
D氏:(40代・化学業界紙)

A:皆さん、一度くらいは一般紙の記者が羨ましいと思ったことがありますよね。

B:しょっちゅうです。僕たちは少人数でやってるから、記者が取材から編集、雑務までこなさないとならない。販売店がないから、購読者も自分たちで開拓する。取材に乗じて営業の毎日ですよ。

C:甘いなァ。B君は若いから知らないだろうけど、昔は記者に広告取りのノルマがあった。「給料ほしけりゃ、広告を持ってこい」が当時の常識で、企業取材が終わっても広告を取るまで帰れない。業界紙記者が通った後は、ペンペン草も生えないといわれていた(笑い)。

D:苦労して広告を取った後も大変。広告を出してくれた中小企業のオヤジさんから、「お前のところに出しても売れなかったぞ。だから広告料は払わん!」と、凄まれて怖い思いをしたり(苦笑)。

B:社員が少ないせいか、社長がワンマンで目立ちたがり屋になりがちですよね。業界の懇親カラオケを主催したのに、ウチの社長がマイクを奪い取って離さない。見かねた先輩記者が諫めたら、その先輩はクビになってしまった。

A:でも、自分の担当がコロコロ変わる一般紙と違って、業界紙は同じ業界の取材に専念できるのは良いところだと思います。企業とは家族同然の付き合いだから、ポロッと本音を話してくれる。

D:専門用語で会話できるので、開発者や技術者の方も楽しそうに話してくれます。新商品情報もいち早く入手できますしね。

C:でも、僕の場合はそれがツラい。新商品ラッシュの時期は1日に何十個と高カロリーなものを食べなきゃならないから、健康診断で毎年注意される。「こっちは仕事だから仕方ないだろ」っていいたくもなるよ。入社して10年後には20キロ以上太っちゃった。

A:私の業界は“食えないネタ”ばかりだから、Cさんが羨ましいなァ。

D:でも、取材が制限されることが多いのも業界紙のツラいところです。

B:そうなんです! バス事故なんかの時には、一般紙は現場に入れるのに、業界紙は規制線の外から取材しなきゃならない。同じタイミングで取材を申し込んだのに、業界紙だけ断わられることがある。

D:オイルショックの時に電力会社の取材に行ったウチの先輩は、新聞の縮小版と名刺を持っていったのに記者だと信じてもらえず、企業スパイだと疑われて追い出されたみたいです。

C:記者クラブに入れなかったり、会見に出られても質問できなかったりする。新商品発表で、一般紙の若い記者が緩~い質問をしているのを聞くと、「なんでこんなヤツらが優遇されるんだよ」と、悔しい思いをする。

D:インタビューで経営者から特ダネを聞き出したのに、同席していた広報担当者が、「大きなメディアにも伝えておいたほうがいいですね」って、勝手にリークしちゃう。そりゃないよ!

B:それだけに、一般紙を出し抜いた時の気分は最高ですよね。

A:つい最近も、私が書いた記事がそっくりそのまま一般紙に後追いされていました。

C:それって、日本経済のご意見番を気取ってるあの新聞だろ。あそこは業界紙の記事を集めるのが得意技だからね(笑い)。

一同:よくある、よくある!

※週刊ポスト2013年3月29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
結婚を発表したPerfumeの“あ~ちゃん”こと西脇綾香(時事通信フォト)
「夫婦別姓を日本でも取り入れて」 Perfume・あ〜ちゃん、ポーター創業の“吉田家”入りでファンが思い返した過去発言
NEWSポストセブン
村上宗隆の移籍先はどこになるのか
メジャー移籍表明ヤクルト・村上宗隆、有力候補はメッツ、レッドソックス、マリナーズでも「大穴・ドジャース」の噂が消えない理由
週刊ポスト
(写真右/Getty Images、左・撮影/横田紋子)
高市早苗首相が異例の“買春行為の罰則化の検討”に言及 世界では“買う側”に罰則を科すのが先進国のスタンダード 日本の法律が抱える構造的な矛盾 
女性セブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン