ビジネス

中国株 年後半に不安要因あるため前半で勝負すべきとの助言

 低迷相場が続く中国株だが、名実共に習近平指導部が発足したことで潮目は変わるのか。今後の中国株の見通しを中国株のスペシャリストでTS・チャイナ・リサーチの代表、田代尚機氏が予測する。

 * * *
 深刻な大気汚染もあいまって、昨年のGDP(国内総生産)成長率が8%を割り込んだことなどから、中国経済の視界不良を指摘する声が広まっている。

 ただ、GDPの四半期ごとの推移をみると、昨年第3四半期の7.4%成長から第4四半期は7.9%成長へと0.5ポイントも回復。昨年8月を底に緩やかな回復基調となっていることが見て取れる。

 問題はこれから力強く回復していけるかどうかだが、そこで注目しておかなければならないのは「政策」だろう。現在、中国は長期で安定的な経済発展を遂げていくために、さまざまな政策をとっているが、そのキーワードは大きく3つある。

 まずは「都市化の進展」だ。農村部では農業従事者が余剰となっており、人をいかに減らして生産性を上げるかが課題となっている。そこで農民を都市に吸収していくという「都市化」の方針が昨年11月の共産党大会で打ち出され、いまやこれが政策の目玉になろうとしている。

 それも中国各地に効率よく都市化を進展させていき、観光や金融、ITなどそれぞれの都市が特色を持って、国家全体のバランスがとれるような発展をさせようとしている。

 加えていえば、先の共産党大会では「5つ(経済、政治、文化、社会、生態文明)の建設をしっかりと行なうことで、『美麗中国』を建設し、中華民族未来永劫の発展を実現する」といった内容が報告書で謳われた。要は環境問題を重視して、ITなどを駆使し、効率的なエネルギーで賄えるような最先端のスマートシティを各地に広げたい、ということなのだ。

 はたしてそれがうまくいくか。そもそも中国にはリーマン・ショック後に打ち出した4兆元の景気対策で生じた副作用がある。不要不急の設備投資が増えた結果、供給過剰に陥り、不動産バブルを引き起こし、深刻なインフレに見舞われた。その反省を踏まえてうまく調整して進めることができれば、本格的な内需主導型経済への転換となるのは間違いない。

 2つ目のキーワードは「資本市場改革」である。中国本土の株式市場は個人投資家の売買比率が高く、どうしても不安定な値動きになりやすい。そこで海外の機関投資家が投資しやすい環境に規制を緩和しようとしている。

 具体的には、これまで本土A株市場ではQFII(適格海外機関投資家)として認められた投資家でなければ取引できなかったが、その投資枠を従来の9~10倍に増やすほか、機関投資家にのみ認めてきた人民元建ての投資枠も海外の適格な個人投資家にも広げる、と当局は発表している。とはいえ、QFIIを10倍まで拡大したとしても、時価総額の16%程度にとどまるものの、外資が流入することで中国株が厚みを増すのは必至の情勢といえるだろう。

 そして、3つ目のキーワードが「所得分配による消費拡大」である。いま中国では消費の中心となる中間層の拡大に向けて、最低賃金の引き上げや社会保障制度の整備など「所得分配改革」が矢継ぎ早に進められている。それによって消費を引き上げ、内需拡大につなげるという狙いである。

 これら3つの政策によって、中国は質のよい経済成長を志向しているため、景気の過熱だけはぜひとも避けたいところだろう。仮にGDP成長率が再び8%を超えて9%に迫るようになれば、当局は金利引き締めなどのブレーキをかけてくるに違いない。

 先を見通すと、おそらくGDPは政策の効果もあって、今年第2四半期までは緩やかに伸びていくだろう。問題は、その先である。第3四半期(7~9月)の成長率が8.4%程度までなら許容範囲だが、それを上回るようであれば、過熱警戒感から景気を冷やすために金利引き上げに転じることも予想される。

 金利が引き上げられれば、株価にも影響を及ぼすのは必至で、中国株の先行きは今年後半に不安要因をはらみかねない状況も見えてくる。目先でいえば、そうなる前の年前半に勝負すべきではないだろうか。

 本土を代表する上海総合指数でいえば、大台の3000ポイント回復も視野に入るが、それも前半までと見た方がいいかもしれない。

※マネーポスト2013年春号

関連キーワード

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン