ビジネス

昨年来、日本株がお祭り騒ぎで上昇した理由とは何だったのか

 アベノミクス効果で急速に株高が進んでいるが、これまで低迷を続けてきた株式市場がここまで“劇的な反応”を見せたのはなぜか。かつて米証券会社ソロモン・ブラザーズの高収益部門の一員として活躍し、巨額の報酬を得て退社した、赤城盾氏が解説する。

 * * *
 昨年末に衆議院が解散されて以来、いわゆるアベノミクスに対する期待から急速な円安と株高が進行した。多くの人が指摘する通り、その背景には、堅調なアメリカ経済に加えて、中国の景気の後退が底を打ち、ヨーロッパの金融危機が収束したというグローバルな金融環境の改善があった。安倍政権は登場のタイミングに大いに恵まれた。

 しかし、民主党政権が続いていたならば、同じ好環境の下であっても、これほど急激な株価の上昇は見られなかったであろう。

 安倍晋三首相は選挙期間中から日銀法の改正をちらつかせてデフレ脱却への協力を迫り、白川方明日銀前総裁はしぶしぶながらも1月の金融政策決定会合で2パーセントのインフレ目標を掲げるに至った。その過程が報道されるたびに、円が売られ株価は跳ね上がった。市場の劇的な反応は、ことの成り行きに対する驚愕の表われである。

 それもそのはず、日本の株式市場は、1990年代初頭のバブル崩壊以降、20年の長きにわたって、日銀に裏切られ続けてきた。その間、ITバブルや新興市場バブルに沸いたこともあったが、ここ数年の日経平均株価の定位置は、1989年末の史上最高値3万8915円のざっと4分の1の水準に過ぎない。ちなみに、1989年末に2753ドルであった米国のダウ平均株価は、幾度もの危機をことごとく克服し、現在ほぼ5倍に値上がりしている。

 何が、日本株の長期低迷をもたらしたのか? 様々な学者が様々な理屈をこねるが、現実に日本株を売買するプロの投資家は、最大の要因は恒常的に物価が下落するデフレが続いたことであり、その元凶は頑なにインフレ警戒を解かない日銀の金融政策にあったと認識している。

 しかし、大衆にとっては、デフレは難しすぎてよく分からない問題である。マスメディアも敬遠するから、日銀は、政治家や官僚のような批判の対象にはなりにくい。ために、国民経済に計り知れない損失を与えてきたかもしれないのに、金融政策に関する日銀の権威は微塵も揺るがなかった。

 FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が、ついでECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が、無期限の金融緩和を宣言してデフレ阻止のお手本を示したが、白川総裁は頑として倣おうとはしなかった。もはや、日銀の唯我独尊は永遠不滅のものかと思われた。

 そこに、突如、安倍総裁の率いる自民党が現われて、選挙の争点に金融政策を掲げて日銀に戦いを挑み、堂々インフレターゲットを勝ち取ったものだから、株価はお祭り騒ぎで上昇したのである。

※マネーポスト2013年春号

関連キーワード

関連記事

トピックス

9月6日から8日の3日間、新潟県に滞在された愛子さま(写真は9月11日、秋篠宮妃紀子さまにお祝いのあいさつをするため、秋篠宮邸のある赤坂御用地に入られる様子・時事通信フォト)
《ますます雅子さまに似て…》愛子さま「あえて眉山を作らずハの字に落ちる眉」「頬の高い位置にピンクのチーク」専門家が単独公務でのメイクを絶賛 気品漂う“大人の横顔”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
最新機種に惑わされない方法とは(写真/イメージマート) 
《新型iPhoneが発表》新機能へワクワク感高まるも「型落ち」でも充分?石原壮一郎氏が解説する“最新機種”に惑わされない方法
NEWSポストセブン
シーズンオフをゆったりと過ごすはずの別荘は訴訟騒動となっている(時事通信フォト)
《真美子さんとの屋外プール時間も》大谷翔平のハワイ別荘騒動で…失われ続ける愛妻との「思い出の場所」
NEWSポストセブン
選手会長としてリーグ優勝に導いた中野拓夢(時事通信フォト)
《3歳年上のインスタグラマー妻》阪神・中野拓夢の活躍支えた“姑直伝の芋煮”…日本シリーズに向けて深まる夫婦の絆
NEWSポストセブン
学校側は寮内で何が起こったか説明する様子は無かったという
《前寮長が生徒3人への傷害容疑で書類送検》「今日中に殺すからな」ゴルフの名門・沖学園に激震、被害生徒らがコメント「厳罰を受けてほしい」
パリで行われた記者会見(1996年、時事通信フォト)
《マイケル没後16年》「僕だけしか知らないマイケル・ジャクソン」あのキング・オブ・ポップと過ごした60分間を初告白!
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
『東京2025世界陸上』でスペシャルアンバサダーを務める織田裕二
《テレビ関係者が熱視線》『世界陸上』再登板で変わる織田裕二、バラエティで見せる“嘘がないリアクション” 『踊る』続編も控え、再注目の存在に 
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビーカーショットの初孫に初コメント》小室圭さんは「あなたにふさわしい人」…秋篠宮妃紀子さまが”木香薔薇”に隠した眞子さんへのメッセージ 圭さんは「あなたにふさわしい人」
NEWSポストセブン
試練を迎えた大谷翔平と真美子夫人 (写真/共同通信社)
《大谷翔平、結婚2年目の試練》信頼する代理人が提訴され強いショックを受けた真美子さん 育児に戸惑いチームの夫人会も不参加で孤独感 
女性セブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン