国際情報

鳥インフル感染は殺処分が原則だが密輸出する中国悪質業者も

 中国で新型鳥インフルエンザウイルスの感染者が相次いで確認され、日に日に死亡者数が増えている。新しいワクチンの開発もこれからで、毒性の高さから不安が大きい。元小樽市保健所長でウイルスの最新事情に詳しい医学ジャーナリストの外岡立人氏が、危機的状況に警鐘を鳴らす。

 *  * *
 中国・上海市と安徽省で、少なくとも28人が鳥インフルエンザに感染し、9人が死亡したと伝えられた。これまで鳥どうしの感染しか確認されていなかったH7N9の鳥インフルエンザは、致死率が低い弱毒性とみられていたが、初めて人への感染が確認され、しかも毒性が高まっていることがわかった。

 中国で新型ウイルスが生まれる背景には、まずウイルスが「変異しやすい環境」が挙げられる。

 広東省を中心とする中国南部では、コウモリやハクビシン、ハリネズミなどの獣肉を食べる習慣があり、それらを大量に飼育している地域もある。それと近接した環境で鶏や豚を飼うことも多い。野生動物と家禽や家畜、人が濃厚に接触していると、3者の間でウイルスが行き来する間に突然変異して、より人に感染しやすくなったり、毒性が高まったりする。

 それだけではない。中国では鶏のH5N1感染予防のため、政府が指導してワクチンが使用されている。ワクチンを鶏に投与すると、感染しても発病しない鶏が増え、そうした鶏から周辺にウイルスがまき散らされることで鳥インフルエンザが拡大する危険性が高くなる。そのため国際的には家禽へのワクチン投与が禁じられている。しかも中国で使われるワクチンは古いタイプの粗悪品が多いため、ワクチン耐性を持った変異ウイルスが頻繁に誕生している。

 さらに農家は中国政府が禁止している抗インフルエンザ薬を不正に入手し鶏に与えていたため、薬剤耐性H5N1ウイルスが多く誕生してきた。これを政府は黙認してきたようだ。

 最近、中国で展開している米ファストフードチェーンが過剰な抗生物質や成長促進剤を投与して成長を早めた「速成鶏」を使用していた事実が報じられた。中国では外資系企業まで家畜への薬剤乱用が常態化していることが窺える。

 家畜業者のモラルは低い。鳥インフルエンザが発生した養鶏場ではすべて殺処分するのが原則だが、感染して弱った鶏をベトナムやカンボジアなどへ密輸する業者がおり、そこから海外へ感染が拡大している。

※SAPIO2013年5月号

関連キーワード

トピックス

今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・イメージ 写真はいずれも当該の店舗、販売されている味噌汁ではありません)
《「すき家」ネズミ混入味噌汁その後》「また同じようなトラブルが起きるのでは…」と現役クルーが懸念する理由 広報担当者は「売上は前年を上回る水準で推移」と回答
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン