ビジネス

カーネーションは輸入が5割 花に体力あり国産より長持ちも

輸入カーネーションなしに母の日は乗り切れない

 母の日の贈り物といえばカーネーションがつきものだが、日本で流通しているカーネーションの約半分が外国産であることは、案外知らない人が多いのではないか。

 農林水産省によると、平成23年に日本国内で販売されたカーネーションは全部で6億2273万4000本。そのうち国内産は3億3120万本で、輸入が2億9153万2000本。実に全体の46.8%が外国産なのだ。

 輸入元の国をみると、もっとも多いのが南米のコロンビアで1億9477万4000本(輸入全体の66.8%)、次いで多いのが中国からで7650万7000本(同26.2%)、続けてベトナム(924万9000本)、エクアドル(768万3000本)、トルコ(145万2000本)と、予想外に日本から遠い国が続く。地球のほぼ裏側にあるような南米からやってくる花たちは、せっかく買っても早く枯れたりしないのだろうか。

「花の基礎体力が違いますから、国産よりも長持ちする花も少なくないんですよ」

 今週だけで約50万本のカーネーションを扱った株式会社大田花き営業部の上田潤さんはそう言う。

「苗の段階で日をよく浴びた花は、基本的に丈夫です。ひまわりで有名な山梨県北杜市明野町は日照時間が日本一ですが、そこでもっとも日の光が強い時期とコロンビアやマレーシアの普段の明るさは同じくらいなんですよ。国産が丈夫さで対抗しようとしても、オリンピック選手の隣で普通のおじさんが走るようなもんです。輸入だから日持ちしないということはないですね」

 もともと、日本のカーネーション需要はひとつの枝にたくさんの花がついているスプレーと呼ばれるタイプが主流だった。また、色も赤と白、ピンクの三色しか求められなかった。そのため国内の農家も、求められる三色のカーネーションばかりを栽培していた。

 ところが、15年ほど前に海外から多様なカラーバリエーションを持つカーネーションの売り込みがあり、国内では花のタイプもスタンダードと呼ばれる一輪ものがおしゃれだと注目された。時を同じくして、コロンビアが“花とコーヒーの国”をうたい文句に、それまでの内戦と組織犯罪の物騒なイメージからの脱却を図り始め、遠く日本へも花を売り込みにやってきた。

「最近では彩り豊かなカーネーションのアレンジや、お母さんが好きなお花をといったように、必ずしも赤いカーネーションを贈るわけではなくなりましたが、それでもやはり母の日といえば赤いカーネーションを求める人が多い。でも、農作物は工業製品と違って生産量の調整が難しい。需要に足りないぶんの赤いカーネーションを、コロンビアに助けてもらってきました」

 だが、5年ほど前からコロンビアの赤いカーネーションの苗が劣化したため、関係者は新たに輸入できる生産国を探すことになった。そのタイミングで、ちょうど中国で生産される花の品質が向上して日本の消費者も満足するレベルに達したため、近年増加中なのだという。産地である雲南省の昆明は日照時間も長く、丈夫で高品質なカーネーションが生産されている。

 輸入と国産の違いによる日持ちの差が心配ないことはよく理解できたが、やっぱり、予想外に早く枯れてしまうような残念な思いはしたくない。食品に賞味期限があるように、花にも日持ちの表示はされないのか。

 農林水産省は花にも産地表示や日持ち保証した販売を推奨しているというが、実際にはなかなか見かけない。店や生産者によっては日持ち保証表示を始めているところもあるので、安心してきれいな花を楽しみたい場合は、そういったものを探すしかない。

 来年は母の日が公式に制定されて100年を迎える。長らく親しまれているカーネーションを贈る風習だが、その需要は長年、大きな変動無く推移していたという。ところが、東日本大震災の後は、目に見えて増えているのだそうだ。

「いつ何があるかわからないという思いをした人が多かったからなのか、それまで、何もしなかった人でもカーネーションを贈るようになったのではないでしょうか。母親という存在の大きさはすごいですね。母の日の一か月後に父の日がありますが、そちらのギフト需要は変わらないんだ、これが(苦笑)」(上田さん)

 やっぱり“母は強し”か。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン