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炊飯器ない時代 ご飯カピカピ防止で布巾に包みこたつで保存

“登紀子ばぁば”こと、料理研究家の鈴木登紀子さん(89才)。ごく平凡な家庭の主婦から料理教室主宰、そして『きょうの料理』(NHK)の人気講師となった鈴木さんが、50年間の生活を振り返る。

 今から50年前の昭和38年(1963)、鈴木さんは39才。1男2女の子育ても一段落し、かねてより“ママ友”たちに切望されていた料理教室を、自宅で主宰するようになったころだ。

「お料理の基本、それこそおだしの取り方から教えました。戦後まもなく生まれた奥さんが多かったですから。いちばんものがなかった時代でしょう? 彼女たちの親御さんも、食料を確保するのに精いっぱいで、何をどう“料理”するかなんてこだわっている場合じゃなかったの。たとえば乾物をどう戻して、いかにおいしく料理するかなどを教えていましたね」(鈴木さん・以下「」内同)

 料理上手だった母・お千代さんから徹底的に仕込まれた鈴木さんの家庭料理は評判となり、やがて『きょうの料理』(NHK)や、女性雑誌から続々と仕事の依頼が入るようになった。46才のときだった。

「50~60才はもう、とにかく忙しかった。月のうち半分がお教室、半分が撮影。生徒さんも大勢いましたから、朝から2部構成にして、毎日てんてこ舞いでしたね」

 しかし、どんなに忙しくも、夫である清佐さんの食事をはじめ、身の回りの世話を怠ることはなかったという。

「だって、夫あっての妻で、夫婦あっての家族でしょう? ご縁で一緒になったのですもの、大事にしなかったらもったいないと思うの」と、鈴木さん。

「残業やおつき合いでパパの帰宅が遅くなるときは、わざと子供たちの前で、『パパの分よ』と、炊きあがりのいちばんおいしいご飯をおどんぶりに取るのです。そうすると、そこにいなくても、子供は父親の存在を感じます。

 電子レンジや炊飯器などない時代でしたから、冬はハンカチとお布巾で包んでこたつに入れて、ちょっとずつ端っこにずらしていくの。ご飯がカピカピになっちゃうから。でも、それを手間と感じたことはなかったわね」

※女性セブン2013年5月23日号

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