芸能

家族ゲームの櫻井翔 「いいねえ~」に背中ゾッとすると作家

 作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が注目している春ドラマのひとつが、櫻井翔主演の「家族ゲーム」だ。どちらかといえば甘くて知的なイメージの櫻井の「笑い」がとにかく怖いのだという。

 * * *
「怖い怖い」と言いつつ、見入ってしまう。見終わると、体に力が入ってしまい肩が凝ってしまう。その「怖さ」ゆえに。その「不条理さ」ゆえに。

 春ドラマの中で、突出した破壊力を感じさせてくれるのがフジテレビ系ドラマ「家族ゲーム」(水曜午後10時)です。繰り返し映画化・ドラマ化されてきた原作ですが、過去の作品とはまた一風違った、不気味なテイストに仕上がっています。今回の「家族ゲーム」のテーマは、一言で表せば「恐怖」にある。

 櫻井翔演じる家庭教師・吉本荒野が、沼田家にやってくるところから物語はスタートします。沼田家は、外から見れば幸せそのもの。庭とガレージのある立派な一軒家に棲み、有名企業に勤める父に美しい母。優秀な兄弟。

 しかし、その内実はボロボロ。浮気を隠している夫、人間不信に陥っている妻。万引き常習犯の勉学優秀な兄、いじめをうけて不登校になった弟。問題を抱える人々の集合体といっていい一家。その光と影の二面性を描く、というのはドラマによくある設定です。一見幸せな家族が、実のところ破綻していた、というのは常套手段。

 しかし、この「家族ゲーム」というドラマの怖さは、別のところにある。すでに壊れかけている家族の中に、本物の破壊者・家庭教師の吉本が入ってくるのです。にやにやと笑いながら。

 吉本の姿や挙動、表情はむしろコミカルですらある。ちっとも暗くない。重たくない。明るい表情のまま、「いいねえ~」とつぶやきながら、徹底的に人間の建前を叩き壊し、追いつめ、家族という枠組みを破壊していく。それが、怖い。「予定調和」や「常識」という枠組みが吉本の中には見あたらない。

「恐怖」と聞くと、私たちはすぐに直接的な暴力行為や血しぶきの飛び散るスプラッター、CG合成の怪物などを連想してしまいます。ところが、本当の恐怖とは大声を出さなくても、生首が飛ばなくても表現できる、ということに気づかされるのです。脚本、セリフ、役者の表情と演技力、演出力によって、血が流れなくても深遠なる恐怖を感じさせることは十分に可能だ、ということを。

 それを象徴するのが、「いいねえ~」という吉本の決めゼリフ。にやっと笑いながら発せられる「いいねえ~」。その後は常に、人の精神を破壊するような行為が待っている。

 櫻井くんの「いいねえ~」を耳にするたびに、条件反射のように背中がゾっとしてしまう。「ジャニーズ」「嵐」の櫻井くんのスウィートなイメージが、このドラマを境に、明らかに別の質に変わりました。

 たった一時間弱の枠の中に、人間の矛盾と苦しみをぎゅっと結晶化するなんて。テレビドラマという制約された窮屈な枠組みの中で、いったいどこまで表現できるのか? もし、ドラマが「新しい世界との出会いと感動を与えてくれる」コンテンンツだとするならば、新しい恐怖世界との出会いを与えてくれている秀作と言えるのではないでしょうか。

関連記事

トピックス

19歳の時に性別適合手術を受けたタレント・はるな愛(時事通信フォト)
《私たちは女じゃない》性別適合手術から35年のタレント・はるな愛、親には“相談しない”⋯初めての術例に挑む執刀医に体を託して切り拓いた人生
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
多くの外国人観光客などが渋谷のハロウィンを楽しんだ
《渋谷ハロウィン2025》「大麻の匂いがして……」土砂降り&厳戒態勢で“地下”や“クラブ”がホットスポット化、大通りは“ボヤ騒ぎ”で一時騒然
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左・共同通信)
《熊による本格的な人間領域への侵攻》「人間をナメ切っている」“アーバン熊2.0”が「住宅街は安全でエサ(人間)がいっぱい」と知ってしまったワケ 
声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン