国際情報

中国人民解放軍サイバー部隊は約40万人所属 精鋭部隊は2000人

 激しい権力闘争に終止符を打ち、習近平氏は13億人のトップに君臨した。これから10年間、「習近平時代」が続くことになる。しかし、「銃口から政権が生まれる」と言われる彼の国で、政権の安定はあり得ない。習近平自身は人民解放軍に対し、「お前たちは国家の軍隊ではない。共産党の軍隊であることを忘れるな」と訓示しているが、現実的には軍の独断専行は危機的レベルに達している。ジャーナリストの相馬勝氏が解説する。

 * * *
 軍の暴走の典型として問題になっているのが解放軍によるサイバーテロだ。米セキュリティ会社のマンディアント社の報告書によると、解放軍は2006年初めから米国を中心に世界141の政府系機関や企業に攻撃をかけ、10か月の間に新聞で6000年分以上に相当する6.5テラ(1テラは1兆)バイトもの膨大な情報を盗んだ。1764日間にわたって連続攻撃をかけたケースもあったという。

 問題発覚のきっかけは昨年10月にさかのぼる。米紙ニューヨーク・タイムズが温家宝・首相ファミリーによる27億ドル(約2700億円)以上に達する巨額蓄財疑惑を報じた後、ニューヨークの同紙本社などが4か月間にわたったサイバー攻撃を受けた。

 同紙がマンディアントに調査を依頼した結果、同紙や米政府機関、企業を攻撃したハッカー集団が、上海に拠点を置く中国人民解放軍総参謀部第3部3局に属する「61398部隊」である可能性が高いと結論づけたのである。

 香港の軍事アナリストによると、総参謀部が率いるサイバー部隊は約40万人おり、そのうち61398部隊は約2000人だが、英語や日本語など世界12か国語に通じる人員を抱えており、全国的にも有数の部隊だという。総参謀部傘下には河南省鄭州市の信息工程大学、江蘇省南京市の理工大学、安徽省合肥市の電子工程学院の3校があり、なかでも優秀な学生が、エリートとして61398部隊に配属されるという。

 政府が軍を統率しきれていないくらいだから、いくらエリート部隊といっても軍内の規律は乱れている。サイバーテロ問題はその“緩さ”によって起きた。党中央の動きに詳しい上海の識者は「彼らは若く優秀だけに、上官の命令を聞かず、自分の判断でサイバー攻撃を仕掛けるため、目立ちやすく、マンディアント社が同部隊を割り出したように、いわば無警戒なところがある。党指導部の頭痛の種だ」と指摘した。

※SAPIO2013年6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン