国内

ネット販売ED薬の過半数が偽物との調査 副作用被害も大きい

 不衛生な室内に置かれた、粉まみれの古ぼけた撹拌機。その付近では、水に浸かる無数の空ビンや液体まみれのバケツが……。いったいどこの工事現場かと首をかしげるだろうが、驚くなかれ、実は「製薬工場」なのだ。

 もちろん、まともな薬ではなく「偽造薬」。これは中国で摘発された「偽バイアグラ」を製造する“闇工場”の内部である。

 バイアグラといえば、世界60か国以上で販売されている米ファイザー社のED(勃起不全)治療薬だが、実はいま、「バイアグラ」の名を謳った偽ED薬がインターネットを中心に出回り、「病院で処方されるのは恥ずかしい」という中高年男性の間で被害が急増している。

 ファイザーやバイエル製薬、日本新薬、日本イーライリリーの4社が合同で行った調査では、ネットで販売されているED薬のなんと55.4%がニセモノだというのだ。

 そのルートとなっているのが、「個人輸入代行サイト」だ。医薬品は個人の使用に限れば、2か月分以内の数量であれば申請なしに輸入できる。この制度を利用して、バイアグラ、シアリス、レビトラといったED治療薬が、国内販売価格よりも格安に購入できるということで、「個人輸入代行」を謳うサイトが乱立している。

 ここに偽物がまぎれこんでいるわけだが、問題はこの薬がどこから来ているかだ。東京都内でED薬の個人輸入代行サイトを運営している男性が明かす。

「うちで扱っているバイアグラとシアリスはアメリカから“個人輸入した正規品”ということになっているが、本当は国内の中国人から買っている」

 つまり、「個人輸入」という宣伝文句自体が“偽装”であって、実際には「中国製偽造ED薬」を売っているのだ。事実、今年2月には、バイアグラやシアリスの偽造薬をネットで販売したとして指定暴力団幹部らが薬事法違反容疑などで逮捕されたばかりだが、これも「中国製」だった。

 さらに問題は、その偽ED薬が不衛生な工場で作られる粗悪品のため、購入者に健康被害をもたらしていることだ。

 製薬会社4社が調査したところ、ネットでED治療薬を購入した276人のうち42.8%に何らかの副作用があったという。ところが、その9割がそのまま放置したとされ、「性」にまつわることだけに被害の声が上げづらい現状が浮かんでくる。

 2011年5月には、奈良県で亡くなった50代男性の衣服から「シアリス50mg」が見つかったが、正規品のシアリスには「50mg」という規格は存在せず、明らかな偽造薬だった。成分を調べたところ、正規品とは別の成分が過剰に含まれており、「死因は肺炎だが、何らかの影響はあったはず」(奈良県薬務課)という。

 ネットでED治療薬を購入したことがある人の87.7%が、「自分の購入した薬は本物」だと信じているというが、中国は、「信じる者が救われる」国ではない。手元に届いたED薬が本物であるかどうか、各社HPにある真正品と見比べて、注意深く確認していただきたい。

取材・文■窪田順生

※週刊ポスト2013年6月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト