国内

「弁護士政治家」仙谷氏 尖閣対応で国政が深刻事態になった

 官僚、秘書、地方議員……政治家の“前職”は多種多様だ。その中で、40人という大勢力と化しているのが、「弁護士(法曹)出身」政治家である。彼らが拠って立つ論理は、「現行法を絶対的に守り、法の下で行動する」というもの。一見正しいように思えるが、立法府に身を置く政治家としては齟齬を生じることも多々ある。弁護士政治家たちによってこの国の政治は歪められてはいないか──。

 現在、国会には衆参約40人の弁護士議員がいる。出身職業別では国会議員の3大供給源と呼ばれる官僚、秘書、地方議員出身者に次ぐ“大派閥”だ。自民党は谷垣禎一・前総裁(法相)を筆頭に高村正彦・副総裁も弁護士出身。閣内には谷垣氏のほか、稲田朋美・行革相、森雅子・少子化担当相の2人がいる。
 
 自民党と連立する公明党の山口那津男・代表、野党では民主党の江田五月・元参院議長や枝野幸男・元官房長官、さらに福島瑞穂・社民党党首など大物がズラリと並ぶ。

「法律に強くて演説も上手だから、政治家にふさわしいと有権者に受け入れられやすい」

 自民党ベテラン議員はそう説明するが、こんな“本音の理由”を付け加えた。

「本業があるから、落選時に生活の面倒を見なくて済むし、何度も選挙に挑戦できるだけの余裕がある」

 そうした弁護士政治家の増加が日本の政治に歪みをもたらしたことを見落とすわけにはいかない。

 仙谷由人氏(落選中)、枝野氏が官房長官として政権中枢を担った菅内閣では、まさに「弁護士政治」でこの国は深刻な事態に陥った。

 2010年9月に尖閣諸島で発生した中国漁船による海上保安庁巡視船への体当たり事件は、いまに続く日中緊張のきっかけとなった政府の弱腰対応として記憶に新しい。当時、海保は中国人船長を公務執行妨害で逮捕し、中国側は報復としてゼネコンの日本人駐在員を拘束、日中関係は一気に緊張した。船長を裁判にかけるか釈放するか、菅内閣の政治判断が問われた。

 ところが、事件対応の指揮を執った弁護士の仙谷官房長官は、「国内法に基づいて粛々と対応する」といって那覇地検に対応を任せ、同地検は船長を処分保留で釈放し、中国に強制送還した。首相と官房長官が政治家の役割を放棄し、検察という行政機関に政治的、外交的判断まで委ねたことはこの国の統治能力を根底から揺るがす失態だった。

 仙谷氏が「弁護士政治家」の真骨頂を発揮したのはここからだ。国会で野党から政府の対応を批判されると、

「谷垣さんは、逮捕した段階で釈放する手もあったということをおっしゃいます。これは、捜査に対する政治の介入、(中略)次の段階で、法務大臣が検察庁法14条を行使して刑事司法にもっと厳しく捜査をやれというのも、あるいはやるなというのも、これは指揮権の発動です」

 と、法律論を振りかざして論点をすり替えたのだ。この事件はそれでは終わらなかった。政府の対応に義憤を感じた海保の主任航海士が、国民に真実を知らせるために中国漁船が巡視船に突撃する映像をネットにアップし、自ら名乗り出たのだ。

 仙谷官房長官は、「公務員が故意に流出させたとすれば明らかに罰則付きの国家公務員法違反になる」とあくまで法的処分を主張し、航海士は書類送検され、国家公務員法の処分を受けて退職を余儀なくされた。

 巡視船に体当たりした中国人船長は釈放、非を訴えた航海士は処分──国民には到底納得できないアベコベの結末だった。

※週刊ポスト2013年6月14日号

関連記事

トピックス

違法賭博胴元・ボウヤーが激白した「水原と大谷、本当の関係」
《大谷から26億円送金》「ヘイ、イッペイ。翔平が前を歩いてるぜ」“違法賭博の胴元”ボウヤーが明かした「脅しの真相」、水原から伝えられていた“相棒の素顔”
NEWSポストセブン
2022年にHKT48を卒業した松本日向
【ボートレース全国24場を踏破】元HKT48・松本日向が語る「趣味→仕事」の楽しさ「負けすぎて『ギャラないじゃん!』ってことも」
NEWSポストセブン
大谷の口座から26億円を受け取った胴元・ボウヤーが独占取材に応じた(Aflo)
《独占スクープ》大谷翔平の26億円を騙し取った“違法賭博の胴元”が告白!「水原一平、エンゼルスとの本当の関係」【蜜月ポーカー写真の存在】
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
《父・水谷豊は1人娘の背中をそっと押して》女優・趣里と三山凌輝、結婚発表の直前まで続いていた母・伊藤蘭との「家族会議」
NEWSポストセブン
比例でトップ当選を果たした石井章氏に浮上した“税金還流疑惑”(写真/共同通信社)
秘書給与不正受給疑惑の石井章・参院議員 2022年には“ファミリー企業”や“幽霊会社”への税金還流疑惑も
NEWSポストセブン
今年もMVPの最有力候補とされる大谷翔平(写真/Getty Images) 
《混迷深まるハワイ別荘訴訟》「大谷翔平は購入していない」疑惑浮上でセレブ購入者の悲痛、“大谷ブランド”を利用したビジネスに見え隠れする辣腕代理人の影
女性セブン
志穂美悦子との別居が報じられた長渕剛
《長渕剛・志穂美悦子についに別居報道》過去の熱愛スキャンダルの時も最後に帰った7億円豪邸“キャプテン・オブ・ザ・シップ御殿”…かつては冨永愛が訪問も
NEWSポストセブン
学校は誠実な姿を生徒たちに見せることができるだろうか(HPより)
《ゴルフの名門・沖学園高等学校で複数の暴力事案が発覚》激怒した寮長の投げた金属製コップが生徒の目元に直撃…流血で数針縫うケガ
NEWSポストセブン
死因は上半身などを複数回刺されたことによる失血死だった(時事通信フォト)
《神戸女性刺殺》谷本将志容疑者が被っていた「実直で優秀」という“仮面” 元勤務先社長は「現場をまとめるリーダーになってほしかったくらい」と証言
週刊ポスト
「部員は家族」と語ってきた中井哲之監督だが…(時事通信フォト)
“謝罪なし対応”の広陵高校野球部、推薦で入学予定だった有力選手たちが進路変更で大流出の危機 保護者は「力のある同級生が広陵への進学をやめると聞き、うちも…」
週刊ポスト
還暦を過ぎて息子が誕生した船越英一郎
《ベビーカーで3ショットのパパ姿》船越英一郎の再婚相手・23歳年下の松下萌子が1歳の子ども授かるも「指輪も見せず結婚に沈黙貫いた事情」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 大谷翔平「賭博トラブル」の胴元が独占告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 大谷翔平「賭博トラブル」の胴元が独占告白ほか
NEWSポストセブン