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先天性の遺伝でがん発症する人 全患者の5~10%に過ぎない

 日本では年間75万人ががんになり、死亡者数はその約半数の36万人。日本人男性が一生涯でがんになる確率は58%、女性で43%と、いまや2人に1人ががんになる時代になった。

 そもそも、がんは「遺伝子の病気」だ。特定の遺伝子が何らかの異常をきたして、がん細胞が増殖することによって発症する。

 現在、人間の全遺伝子約2万2000個のうち、がんの発症に関係するとされる「がん関連遺伝子」が300個以上確認されているが、日々、研究者らによって新たな関連遺伝子が発見されている。

 がんの発症原因は2パターンある。もともと親から受け継いだ遺伝子に変異がある「先天性」のケース。もう1つは、年を重ねるごとに生活習慣などから遺伝子が傷ついたり、突然変異が起きたりする「後天的な原因」で発症するケースだ。

 米女優アンジェリーナ・ジョリーに(37)に両乳房切除を決断させた検査は、先天性の遺伝子を調べた前者のケース。BRCA1というがん細胞の発生を抑制する遺伝子に生まれつき変異があったことがわかり、乳がんのリスクは87%と診断された。

 東京大学医科学研究所・先端医療センターの古川洋一教授(臨床ゲノム腫瘍学)がいう。

「同じように遺伝性を原因とするがんは、大腸がんや前立腺がん、胃がんの一部などにも存在します。大腸がん患者の約5%の原因が遺伝で、リンチ症候群という遺伝子変異を持つ人が発症しやすい。親から子への遺伝確率は50%なので、家族や親戚にがんに罹った人が多くいるという人は注意が必要です」

 遺伝性のがん検査は、がん専門病院や遺伝子診療部門を備えた大学病院などで受けることができる。検査費用は保険適用外のため20万~40万円とやや高額だ。血液採取による検査法が一般的で、解析結果が出るまでには1か月程度かかる。

 ただし、そのように先天的な遺伝子の変異によってがんを発症する患者は、すべてのがん患者の5~10%に過ぎない。残りの90~95%は人が生まれた後、環境因子や加齢によって遺伝子が変異して発症する。

※週刊ポスト2013年6月14日号

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