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木造アパートでの共同生活の住人たちの交流描いたマンガ作品

【マンガ紹介】
『椿荘101号室(1)』(ウラモトユウコ/マッグガーデン/600円)
『ハチミツとクローバー(1)』(羽海野チカ/集英社/420円)

 初めてひとり暮らしをした時のことを覚えていますか? もし今ひとり暮らしをするなら、こんなのがいいなと思っている物件があります。

 ウラモトユウコ『椿荘101号室』(マッグガーデン)の主人公・春子は、仕事もお金もない状態で、同棲していた恋人にふられ、おんぼろ木造アパートの一室に住むことに。この住人たちがちょっと変わっているのです。まず102号室の磯谷さん。

 自ら立派なキッチンに改造した部屋で親身に春子の話を聞いて、朝ご飯も出してくれる。親切な人…と思ったら、その朝ご飯、イートインで300円! 住人のご飯を有料で請け負うしっかりもののシェフなのです。103号室の美を追求する加納さんはお部屋全体がお風呂(20分200円で使用可)! 美容指導(高額)もしてくれます。パソコンも使えてみんなが集まる談話室、と思っていたら、そこは203号室の臼井さんの部屋でした。

 それぞれが自分のやりたいことだけやっているがゆえに、逆に足りない部分を補い合う、不思議な絆が生まれている…シェアハウスとも違う、無茶苦茶な共同生活に疲弊しつつ、傷心の春子のさみしさと不安の量は、ぐっと減っていくのです。

 美大を舞台にした羽海野チカ『ハチミツとクローバー』(集英社)にも魅力的なアパートが。築25年・フロなし、家賃3万5000円。美大から徒歩10分。住んでいるのは全員貧乏美大生! ここでの食事が素敵なんです。

 何か食べ物が来ると空き缶を使った鐘が鳴り響き、一部屋に集まって食らう! 臨時収入が入った先輩が買ってきた大量のコロッケには塩、しょうゆ、マヨネーズ、ソース、なんでもつけてディップパーティー! またあるときは、卒業生の通称ローマイヤ先輩が仕事でもらう、賞味期限切れ寸前のハムに一同歓喜! 肉の存在は「アパートのみんなを心身ともに豊かにし、創作意欲を向上」させるのです。

 楽しくて、でも一時だけの(借主は入れ替わる)、かりそめの共同生活。それゆえのきらめきとせつなさが漂っていて、ますますこのふたつのアパートが魅力的に見えてきます。

■文/門倉柴麻

※女性セブン2013年6月27日号

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