ビジネス

自民党の「日本再興戦略」民主党公約を彷彿とさせると大前氏

 成長戦略「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」が、経済財政運営の基本方針「骨太の方針」とともに6月14日、閣議決定された。威勢がいい内容に、おおむね好意的に受け止められているように見えるが、安倍晋三首相は経済のことを理解していないのではないか疑っている大前研一氏が、その疑惑について検証する。

 * * *
 6月半ばに閣議決定された「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」には、かつての民主党のマニフェストを彷彿とさせる盛りだくさんの「成長戦略」が羅列されている。だが、その中には不可解なものが数多い。

 たとえば「1人当たり名目国民総所得(GNI)は中長期的には年3%を上回る伸びとなり、10年後には150万円以上増加することが期待される」と書いてある。これを、安倍首相が「平均年収」や「皆さんの所得」などと勘違いして(あるいは意図的に?)説明したことは、多くのマスコミで指摘された。

 国民総所得は、個人の所得だけでなく企業の利益や政府の公共投資が含まれるため、目標通り10年後に150万円以上増加したとしても、給与などに反映されなければ、国民の年収が増えるとは限らないからだ。

 百歩譲って、「首相はわかりやすく説明しようとした」(菅義偉官房長官)のだとしても、10年後の日本における最大のセグメントは年金受給者であり、もし首相が明言したように「1人当たりの平均年収を150万円増やす」のであれば、年金所得も150万円増やすのかという話になる。

 勤労所得を増やして年金所得をそのままにしておくと、ロシアなどが経験しているように、年金生活者は塗炭の苦しみを味わうからだ。しかし、ただでさえ日本の年金システムが破綻寸前であることは明白で、それを150万円も増やすとなると、税金を上げなければならない。一国の首相が、そんなごく基本的なことも踏まえずに発言していたとしたら、驚きを通り越して空恐ろしくなる。

※週刊ポスト2013年7月12日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

田中容疑者の“薬物性接待”に参加したと証言する元キャバクラ嬢でOLの女性Aさん
《27歳OLが告白》「ラリってるジジイの相手」「女性を切らすと大変なんだ…」レーサム創業者“薬漬け性接待”の参加者が明かした「高額報酬」と「異臭漂うホテル内」
週刊ポスト
明るいご学友に囲まれているという悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さまのご学友が心配する授業中の“下ネタ披露” 「俺、ヒサと一緒に授業受けてる時、普通に言っちゃってさぁ」と盛り上がり
週刊ポスト
「大宮おじ」「先生」こと飯田光仁容疑者(32)の素顔とは──(本人SNS)
〈今日は〇〇にゃんとキスしようかな〉32歳無職が逮捕 “大宮界隈”で少女への性的暴行疑い「大宮おじ」こと飯田光仁容疑者の“危険すぎる素顔”
NEWSポストセブン
TUBEのボーカル・前田亘輝(時事通信フォト)
TUBE、6月1日ハワイでの40周年ライブがビザおりず開催危機…全額返金となると「信じられないほどの大損害」と関係者
NEWSポストセブン
インド出身のYouTuberジョティ・マルホトラがスパイ容疑で逮捕された(Facebookより)
スパイ容疑で逮捕の“インド人女スパイYouTuber”の正体「2年前にパキスタン諜報員と接触」「(犯行を)後悔はしていない」《緊張続くインド・パキスタン紛争》
NEWSポストセブン
ラウンドワンスタジアム千日前店で迷惑行為が発覚した(公式SNS、グラスの写真はイメージです/Xより)
「オェーッ!ペッペ!」30歳女性ライバーがグラスに放尿、嘔吐…ラウンドワンが「極めて悪質な迷惑行為」を報告も 女性ライバーは「汚いけど洗うからさ」逆ギレ狼藉
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
小室眞子さん第一子出産で浮上する、9月の悠仁さま「成年式」での里帰り 注目されるのは「高円宮家の三女・守谷絢子さんとの違い」
週刊ポスト
田中圭の“悪癖”に6年前から警告を発していた北川景子(時事通信フォト)
《永野芽郁との不倫報道で大打撃》北川景子が発していた田中圭への“警告メッセージ”、田中は「ガチのダメ出しじゃん」
週刊ポスト
夏の甲子園出場に向けて危機感を表明した大阪桐蔭・西谷浩一監督(産経ビジュアル)
大阪桐蔭「12年ぶりコールド負け」は“一強時代の終焉”か 西谷浩一監督が明かした「まだまだ力が足りない」という危機感 飛ばないバットへの対応の遅れ、スカウティングの不調も
NEWSポストセブン
TBS系連続ドラマ『キャスター』で共演していた2人(右・番組HPより)
《永野芽郁の二股疑惑報道》“嘘つかないで…”キム・ムジュンの意味深投稿に添付されていた一枚のワケあり写真「彼女の大好きなアニメキャラ」とファン指摘
NEWSポストセブン
逮捕された不動産投資会社「レーサム」創業者で元会長の田中剛容疑者
《無理やり口に…》レーサム元会長が開いた“薬物性接待パーティー”の中身、参加した国立女子大生への報酬は破格の「1日300万円」【違法薬物事件で逮捕】
週刊ポスト
2日間連続で同じブランドのイヤリングをお召しに(2025年5月20日・21日、撮影/JMPA)
《“完売”の人気ぶり》佳子さまが2日連続で着用された「5000円以下」美濃焼イヤリング  “眞子さんのセットアップ”と色を合わせる絶妙コーデも
NEWSポストセブン