ライフ

心臓ペースメーカー 70歳以上は1.5万円の支払いで済む例も

 器具や手術の進歩などで、病状がそれほど深刻でないケースでも心臓ペースメーカーの植え込みに踏み切る人が増えている。心臓に電気刺激を送るペースメーカーは、そもそもどういった患者が付けるものなのか。日本医科大学付属病院心臓血管外科の大森裕也助教が解説する。
 
「一般にペースメーカーは脈が遅くなるタイプの不整脈に対して、心拍数を一定値以上に保つために植え込まれます。心臓の拍動が途切れたり、間隔が開きすぎたりする時に、それを認識して心筋に電気刺激を与えて心臓のリズムを整えるのです」
 
 心臓に刺激を与えると聞くと、大掛かりかつ危険な手術のように思われるが、最近は昔と比べて格段にハードルが低くなっている。
 
「治療が始まった40年ほど前に比べ、今は患者に対する負担が劇的に減っています。まずは器具の小型化が進みました。心配されるのは心臓に装着したリードが移動したり断線したりすることですが、それもほとんどない。しっかりと心臓に固定できます。多くの人が心配する携帯電話の電磁干渉も、ほとんど影響がないといえます」(大森氏)
 
 実物はライターのジッポ程度の大きさで20~30グラム。そこから、電気刺激を心臓に伝えるリードが伸びている。電池の寿命は一般的には6年程度とされるが、患者の症状により出力量も異なるため、一概にはいえない。そのため、3か月に1度はペースメーカー検診を受けて機械の不具合や電池の残量などをチェックする必要がある。
 
 次に心配なのは費用面だろう。相当な経済的負担になりそうに思えるが、意外なほど安価に済む。
 
「植え込みのための手術料などを合わせると初期費用で200万円以上かかります。かなり高額ですが、全額払う方はまずいません。『高額療養費制度』が適用されますので、リタイア後で所得の低い高齢者ならば、食費や差額ベッド代を別にすると数万円しかかからないこともあります」(大森氏)
 
 高額療養費制度は公的医療保険の1つ。制度が適用される医療行為でもし高額な治療費が発生してしまった場合でも、患者の負担が増えすぎないように、患者の年齢や所得に応じて支払う医療費の上限額が決められる制度だ。とりわけ高齢者の負担は大きく減る。
 
 たとえば、ペースメーカー手術に250万円かかったとしよう。70歳未満ならば、月収53万円以上の上位所得者で17万円。月収がそれ以下の一般所得者なら約10万円で、住民税が非課税の低所得者ならば3万5400円を負担するだけだ。
 
 70歳以上ならば、さらに負担は減り、最低で1万5000円程度の支払いで済んでしまうケースもある。

※週刊ポスト2013年7月12日号

関連キーワード

トピックス

東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
津波警報が発令され、ハワイでは大渋滞が発生(AFP=時事)
ハワイに“破壊的な津波のおそれ” スーパーからは水も食料品も消え…「クラクションが鳴り止まない。カオスです」旅行者が明かす現地の混乱ぶり《カムチャツカ半島地震の影響》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
牛田茉友氏はNHKの元アナウンサーだったこともあり、街頭演説を追っかける熱烈なファンもいた(写真撮影:小川裕夫)
参院選に見るタレント候補の選挙戦の変化 ラサール石井氏は亀有駅近くで街頭演説を行うも『こち亀』の話題を封印したワケ
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
大日向開拓地のキャベツ畑を訪問された上皇ご夫妻(2024年8月、長野県軽井沢町)
美智子さま、葛藤の戦後80年の夏 上皇さまの体調不安で軽井沢でのご静養は微妙な状況に 大戦の記憶を刻んだ土地への祈りの旅も叶わぬ可能性も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン