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働かない兄弟 他の兄弟に扶養義務あるが法的な強制力は低い

 親の遺産相続を巡って兄弟の身に次々に起きるトラブルをどう解決するか。中でも働かない兄弟の存在は、親を亡くしたときに、新たな問題を浮き彫りにする。

 働かない兄弟とは縁を切ればいいじゃないか。そう考える人もいるかもしれない。だが、法律は簡単にそれを認めてはくれない。

 Aさん(38)の妻の兄(45)は、親の死後、親が残したマンションに住み、相続した遺産を食い潰しながら生活をしていた。潤沢とはいえない遺産はやがて底をつき、兄の生活は困窮していった。

 Aさんの妻は「兄を捨ててはおけない」とスーパーでパートを始め、兄に資金援助するようになったという。

 Aさんは「もともと働いていなかった義兄の責任。そこまでする必要はない」と妻を諭すが、そのたびにケンカになり、夫婦の仲が険悪になっていった。兄弟にも親子と同じように扶養の義務は生じるのだろうか。弁護士の好川久治氏が解説する。

「兄弟や姉妹にも扶養義務はあります。扶養には、生活の『保持義務』と『扶助義務』とがあるのですが、兄弟姉妹は後者です。

 前者は夫婦間や社会的・経済的に自立していない子を抱える親の義務で、自分の生活を犠牲にしてでも、自分と同程度の生活を維持しなければいけないというもの。一方の後者は、自分の生活に余力がある場合に限って兄弟姉妹を助けましょう、というものです」

 裏を返せば、自分の生活に余力がなければ、兄弟の面倒を見なくてもいいことになる。弁護士の遠藤常二郎氏のアドバイス。

「扶助義務は現実的には法的な強制力は低い。“うちも余裕がないので、生活保護を受けて暮らしてくれ”と突っぱねることもできます。

 ただ、実の兄弟が生活保護を受けるのは、世間的に見栄えが良くないのは事実。まったく余裕がない場合は違うでしょうが、実際には世間体を気にして扶助するケースが多いようです」

※週刊ポスト2013年8月9日号

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