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ひこにゃんらを人気者に仕立て上げた社長のゆるキャラPR戦略は

阿波踊りを次世代に継承するゆるキャラ「トクシィ」

「多くのゆるキャラは、目的がぼんやりしているんですよ。時代のニーズにマッチした役割を持たせることが重要です」

 そう厳しく指摘するのは、これまで数々のゆるキャラを人気者に仕立てあげた大阪の名物社長、PR会社「TMオフィス」の殿村美樹氏である。2007年に彦根城のPRで、ひこにゃんを全国区に押し上げて以降、「我が町のゆるキャラのPRも」と全国の自治体関係者が続々と彼女のもとを訪れている。

 いまやゆるキャラは雨後の筍のごとく、日本中に溢れている。徳島市のゆるキャラもそのひとり。今年3月、殿村氏のもとに徳島市から「トクシィを有名にしてほしい」と依頼があった。徳島市のイメージアップキャラとして昨年2月に誕生したトクシィだが、全国的な知名度はほぼゼロ。

 そこで殿村氏が編み出した戦略は、トクシィを子供に阿波踊りを教える“阿波踊り先生”に任命し、記者発表を行なうというもの。ゆるキャラ初の“教育キャラ”にしようというのだ。

 殿村氏の仕掛けはそれだけに留まらない。徳島市の職員との会話から徳島県は全国で一番自殺率が低いということを知るや、「それは阿波踊りの効果じゃないか」と考えた。

 そこで、徳島大学の先生に「阿波踊りは、大人にも子供にも心と体の健康に良い」と効能をアピールしてもらうことを提案した。市の職員は「人選から大学側の許可まで半年かかる」と躊躇したが、「記者発表を成功させるために絶対必要!」と発破をかけて、1か月で間に合わせた。

 大学卒業後、大手広告代理店やPR会社を経て、現在の会社を立ち上げたのは25年前。いまや、自治体PRでは全国で殿村氏の右に出る者はいない、といわれる。そのノウハウが活きたのが6月末に行なわれた記者発表だ。会見の場として殿村氏が選んだのは、市内の保育園。トクシィと一緒に、保育園の子供たちや市長が踊る“絵”をつくるためだ。

 効果は抜群。ニュースは全国108媒体で報道され、150万円の予算に対し、2億9000万円分の広告効果があったという。敏腕女社長を参謀にしたトクシィ。「くまもん」ブームの“次”が、今、着々と作られている。

撮影■渡辺利博

※週刊ポスト2013年8月9日号

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