スポーツ

楽天解任時の田尾安志氏 三木谷氏の「誓約書書け」断固拒否

 現在好調の楽天ゴールデンイーグルスの初代監督を務めたのが、中日~西武~阪神で活躍した田尾安志氏。「プロ野球ニュース」でキャスターを務めるなど、柔和なイメージの強い田尾氏だが、実際は、気に入らぬことにははっきりと物申すタイプだという。そんな田尾氏について、スポーツライターの永谷脩氏が綴る。

 * * *
 楽天がパ・リーグの首位固めに入った。2005年の球団創設の時を考えれば隔世の感がする。いまや思い出す人も少なくなってしまったが、初代監督は現役時代を中日・西武・阪神で過ごした田尾安志だった。監督生活は1年と短命で、契約期間中に解任されたが、その際に三木谷浩史オーナーから「違約金を払う代わりに球団の悪口を言わないという誓約書を書け」と言われ、「制約されるような金はいらない」と突っぱねたと話していた。

 外見は柔らかな印象だが、内面は気骨のある男である。これは同志社大時代の監督・渡辺博之の影響も大きい。同大から中日に1位指名された時のこと。「四国の怪童・中西二世」といわれた高知高の杉村繁(現・ヤクルトコーチ)との雑誌での対談企画を、観光を兼ねて高知でやろうという話になったが、渡辺監督に「大学生が高校生のもとに行くのは筋が違う」と怒られた。彼の秘蔵っ子だけに、田尾は「筋を通す」男だった。

 ただ、筋が通らないと感じたら上司にも物申すため、軋轢を生むことも多かった。中日で新人王になるなど活躍したが、西武にトレードされたのは、契約更改の席で当時の球団代表から「お前を使ってやっている」と言われたことに腹を立て、「あなたには雇われていません」と返したことが遠因だった。

 移籍先の西武でも“事件”が起こる。1年目のキャンプでの最初の休日、田尾は駒崎幸一らとともに、「気疲れも多いだろう」とルーキーの大久保博元(現・楽天二軍監督)を食事に誘った。大久保だけは門限に間に合うよう帰したが、広岡達朗監督に見つかり、大久保は即二軍行き。納得がいかない田尾は、広岡に直談判した。

「門限までに帰しているし、誘ったのは僕だから、彼を落とすなら僕も落としてください」

 そう迫る田尾に、広岡監督は「お前のように出来上がった選手には何も言わんが、若い連中は遊ぶ暇があったらバットを振らないといけない」と諭した。田尾は“確かにそれも一理ある”と妙に納得していたものだ。

※週刊ポスト2013年8月16・23日号

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト