国際情報

金正日氏の銅像の上着がダウンジャケットに替えられた理由

 金正日総書記の死後、三代目世襲の正統性を強調するために、いま続々と巨大な「金正日像」が北朝鮮国内に建設されているが、その銅像に彫刻されていた“上着”が、短期間のうちに“着替え”られていたという。ジャーナリスト・惠谷治(えや・おさむ)氏の新刊『北朝鮮はどんなふうに崩壊するのか』(小学館)によれば、莫大な費用をかけて改修されたのには、ある重大な理由があるという。

 * * *
(平壌市内の万寿台の丘に)金日成と金正日の父子像が再び姿を現わしたのは、1カ月ほど過ぎた2013年2月10日の旧正月元旦だった。その写真を注意深く見ると、金正日像は建立されたときの姿ではなく、生前に愛用していたジャンパーの上に野戦用ダウンジャケットを着た姿に変身していた。

 前年4月に父子像の除幕式が行なわれた際、金日成像はそれまでの「閉襟洋服(人民服)」に代わって、ネクタイを絞め、背広を着て、メガネをかけた晩年の姿に造り替えられていた。その際の金正日像は、メガネをかけ、常用していたジャンパーの上にノーマルコートを着た姿だった。

 ジャンパーにノーマルコートという金正日の姿は、外部観察者の私でも違和感を覚えるほどであり、近親者や側近、特に後継者となった金正恩が馴染めなかったとしても不思議ではない。その結果、建立からわずか10カ月後に、金正日像は造り直され、金正日像は野戦用ダウンジャケットを着た馴染みある姿に改修されたのである。

 それにしても、なぜわざわざ一度は公開された銅像が改修されたのか。その謎を解くカギは、この野戦用ダウンジャケットにある。

 金正日は「先軍政治を本格的に始めるとき」、愛する高容姫(金正恩の生母※注)から「朝鮮の歴史に残す」ためにと、野戦用ダウンジャケットをプレゼントされたというのだ。

 つまり、(“着替え”られたダウンジャケットは)金正恩にとっては亡き父母ゆかりのジャケットだったのである。

【※注】日本のメディアでは「高英姫」と表記するものが多いが、惠谷氏は北朝鮮からの帰還者の証言などをもとに「高容姫」と表記している。

※惠谷治著/『北朝鮮はどんなふうに崩壊するのか』より

関連記事

トピックス

谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン