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セクハラ処分撤回相談に弁護士「負けたら恥の上塗りですよ」

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「酔って社員を叱咤したら、セクハラ扱いに。名誉を回復したい」という質問が寄せられた。

【質問】
 先月、得意先との夜の会食後に、つい酔った勢いで新人の女性社員に日頃の勤務態度について、ひとつだけ携帯を通し注意を与えると、彼女はセクハラだと会社に訴え、私は3か月の減給と叱責を受けました。こちらにはセクハラをしたつもりはなく、会社内での名誉を回復するにはどうすればよいですか。

【回答】
 セクハラは、性的言動があったことが前提です。職場のセクハラ防止措置に関する厚労省の指針では、性的言動とは「性的な内容の発言及び性的な行動」であって、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等があり、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が含まれるとしています。

 携帯電話で注意したことで処分されたのですから、あなたの発言に性的な事実関係の質問や言及があったかが問題になります。「ひとつだけ」というのですから、あなたも話した内容を覚えているでしょうから、その中に思いあたることがありませんか。

 まったくセクハラ発言がないのにセクハラとして処分された場合、3か月減給と叱責という懲戒処分をした会社に対しては処分の撤回を求め、応じなければ懲戒処分無効確認を求めて労働審判や裁判で争うことになります。いわれのない被害申告をした新人女性社員に対しては、虚偽のセクハラ申告は不法行為ですから、損害賠償請求訴訟を提起する途があります。

 原則として、セクハラ発言があったことを証明するのは、会社や女性側ですが、録音がなければ、状況証拠で判断されることになります。女性が直ちに親や友人に相談していると、その証言はそれなりに有効です。

 他方、あなたは同席した人が得意先では証言も依頼しにくいところです。あなたの弱みは、酔った勢いで部下に話をしてしまったことです。飲酒をすると、程度の差こそあれ、節度を踏み外しがちなものです。

 もし、内容が性的でなかったとしても、酔った状態で注意された女性が変に感じることもあります。いうまでもありませんが、裁判で負ければ恥の上塗りになります。

※週刊ポスト2013年8月30日号

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