ビジネス

定年制廃止のさつま揚げ会社72歳社員「頼りにされて嬉しい」

 4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業は対応に追われている。NTTグループは10月から現役世代の賃金上昇を抑制し、その分を再雇用する60歳から65歳までの賃金に充てるという新賃金体系に移行する。

 しかし、全国にはすでに65歳どころか70歳以降も働ける中小企業がある。独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」は、70歳以上の人が働いている企業の事例を収集し、その中から約100例を毎年「70歳いきいき企業100選」としてまとめている。

 その100選(2012年版)の中から、「70歳雇用」の最新事例を見ていこう。鹿児島県の特産、さつまあげを製造・販売する「有村屋」(鹿児島市)は、“原料の魚の質や鮮度によって微妙な工程管理を行なわなければならず、熟練の眼・感触・技が必要”という理由から5年前に定年を廃止。今や従業員75人のうち、60歳~64歳は5人、65歳~69歳は3人、70歳以上は2人となっている(昨年時点)。

 同社は経験・熟練度の評価によって個別に給与・昇給を設定しており、定年がないから、当然、高齢者でも待遇は変わらず、60代前半よりも65歳以上の人の方が高い給与水準になる場合もある(高齢者の一部は健康状態に合わせ、パート勤務も選べる)。

 同社の高齢者の場合、〈Aさん(男性、72歳)は、かまぼこの成形工程をフルタイム勤務の下で若手に教えています。「70歳を過ぎても、会社に期待され、頼りにされていることがうれしい、働けるかぎり頑張っていきたい」〉と、仕事にやりがいを感じている。

 既製服のリフォームやリメークを行なっている「ノア」(京都市)も同様に、2年前に定年を廃止し、従業員42人のうち、60歳~64歳は6人、65歳~69歳は4人、70歳以上は3人いる。

 同社の若い従業員は、〈「高年齢者は、豊かな経験と高度な技術力を持っており、縫製技術が学べる。自分も健康に注意して長く働きたい」〉と語っているという。

 両社に共通しているのは、高齢者は好きな仕事をいつまでも続けられ、若い世代はその技を教えてもらえるという、双方にメリットのある良好な関係が築けている点だ。日本の「ものづくり」を支えてきた高齢者を活かす企業がさらに増えれば、「製造業復活の日」も近い。

※週刊ポスト2013年9月20・27日号

関連キーワード

トピックス

打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
大の里の強さをレジェンド名横綱たちと比較 恵まれた体格に加えて「北の湖の前進力+貴乃花の下半身」…前例にない“最強横綱”への道
週刊ポスト
地上波ドラマに本格復帰する女優・のん(時事通信フォト)
《『あまちゃん』から12年》TBS、NHK連続出演で“女優・のん”がついに地上波ドラマ本格復帰へ さらに高まる待望論と唯一の懸念 
NEWSポストセブン
『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン