国内

尼崎連続変死事件の「恐怖の館」が1330万円で自己競落の事情

 兵庫県尼崎市の連続変死事件発覚から約2年。角田美代子・元被告(留置場で自殺)が親族らと共同生活していたマンションが、ようやく別の人物の手に渡った。バルコニーには「監禁部屋」が存在し、遺体で見つかった被害者らが継続的にリンチを受けるなどの凶行の舞台となっていたことが次々と明るみに出たことで、この角田邸は「恐怖の館」と呼ばれもした。
 
 神戸地裁尼崎支部の差し押さえを経て、5社による競売の末、今年2月に1330万円で落札したのは、大阪市の金融業者。全国的に有名になった“事故物件”だが、売るアテはあるのだろうか。
 
「この業者が落札したのには、背に腹は代えられない事情がある。これは『自己競落』です」(尼崎市内の金融業者)
 
 自己競落とは、担保物件の競売を申し立てた債権者が、物件を自ら落札する方法である。不動産登記を見ると、確かに落札した金融業者は2008年11月、物件に2200万円の根抵当権を設定し、角田美代子の義妹・三枝子容疑者(殺人罪などで起訴)に融資していた。
 
 借金の返済が滞った場合には、貸し手である債権者が担保物件を裁判所を通して差し押さえ、すみやかに売却してその返済に充てるのが一般的だ。しかし今回のような場合、競売では売却額がかなり安くなると見込まれるため、ひとまず自ら競り落として物件を確保し、その後できるだけ高値で売却する方針をとったと考えられる。
 
「今回の競売における物件の売却基準価額(最低売却価額)は224万円なので、最悪2000万円近い損失が出ていた可能性があった」(前出の金融業者)
 
 とはいえ、今後も簡単に売れるとは思えない。
 
「一軒家なら更地にして建て替えるなりすればいいが、マンションでは不可能。極秘の再開発の計画があるのではという噂も流れたが、住宅密集地であることなどを考えても可能性は低い。当面は近しい知り合いに貸すくらいしかないでしょう」
 
 ある不動産業関係者はこう語るが、落札業者は売却の目処が付いているのだろうか。関西の金融業者の話。
 
「この会社は個人や中小企業経営者を対象とした不動産担保ローン会社。不動産の価値は見誤らない。独自の売却ルートを持っているなど、何らかの形で処分できる算段があるのだろう」
 
 落札業者に聞いたが、「この件に関してはコメントを控えさせていただいています。警察からも第三者へ話をするのを差し控えてほしいといわれています」と、言葉を濁した。

※週刊ポスト2013年10月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン