国内

大前研一氏 都道府県に「真の成長戦略」出させることを提案

「異次元の金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」というアベノミクスの「3本の矢」はことごとく失敗する可能性が高い、と大前研一氏は指摘する。では、どうすべきか。大前氏が処方箋を明かす。

 * * *
 私が提案したいのは「フラッグシップ・プロジェクト」だ。道州制の導入はずっと提言しているが、その実現には(橋下徹・大阪市長の失速もあり)まだ時間がかかりそうなので、とりあえず現在の47都道府県と20政令指定都市に、日本の将来にとって重要だと思われる「真の成長戦略」を1自治体1アイデアずつ集中的に実行してもらうのである。

「特区」のようなチマチマしたものではなく、都道府県や政令指定都市を丸ごと対象にして、独自のプロジェクト案を募集する。

 たとえば、離島が多くて医師不足に悩んでいる長崎県なら、海外の一定の国の医師免許を持っている人は、県内の医師が足りない地域で開業できるようにする(アメリカやイギリスなどでは当たり前だ)。そして言葉や生活の面などをサポートする仕掛けを県が作り、外国人医師の定住を促すのである。

 近年、「国際教養大学」を中心にグローバル人材の育成に力を入れている秋田県であれば、母国語が英語の国で国語の教員免許を持っている人は、正規の英語教師になれることにする(今はALTと呼ばれる指導助手にしかなれない)。そうすれば、秋田県の子供たちの英語力は飛躍的に向上し、グローバルに活躍できる人材輩出も増すだろう。

 また、北海道は「航空特区」になればよい。北米から太平洋を越えてアジアに向かう航路は北海道の上を通るので、北海道が航空路線網を自由に構築できたら、新千歳をはじめとする北海道の空港は北米─アジア路線のハブになれる。アジアの人から人気が高い北海道は“東洋のスイス”として、観光産業で発展するのは間違いない。

 介護士が不足している県では、フィリピンやタイ、インドネシアなど日本が認めている然るべき国で資格を取得した人は、その県に限って介護士の仕事をしてよいことにして、県の責任で日本語や日本の習慣などを教える仕組みも考えられる。難しい漢字で日本の試験に受からなくても、十分な仕事ができることは今までの外国人の研修経験でわかっている。

 重要なポイントは、あくまでも都道府県や政令指定都市が主体的に、自ら一つのプランを考えて手を挙げることだ。国が中央から勝手に決めるやり方では失敗する。都道府県・政令指定都市ならではのニーズや戦略が反映されないからである。

※SAPIO2013年10月号

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