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プア充流行に大前研一氏「野心と工夫で簡単に一歩先進める」

 年収300万円だからこそ、豊かで幸せな日々を送ることができる──宗教学者の島田裕巳氏が自著『プア充─高収入は、要らない─』で提言した「プア充」が話題となっているが、大前研一氏はそうした見解に否定的だ。大前氏は“プア充”の問題点をこう指摘する。

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 最も現実的な日本の未来は、スペインやポルトガルのようにずるずると没落し、国全体が夕張化、デトロイト化する姿だ。

 2014年度一般会計予算の概算要求総額は過去最大の99兆2500億円に膨らんだ。すでに国の借金が1000兆円を超えてGDP(国内総生産)の2倍に達し、先進国の中で最悪レベルになっているにもかかわらず、まだ政府は予算をバラまいて借金を増やそうとしているのだ。税収を増やすという触れ込みの「成長戦略」も、「農業の6次産業化」などバラ撒きばかりでその実現性は甚だ怪しい。

 このままいくと日本は、私がかねて警告しているように、国債が暴落してハイパーインフレになる可能性が高い。その場合、勤労者はインフレに合わせて給料も上がっていくが、年金で生活している人たちは生活に困窮する(一応、年金制度では物価が上昇したらその分、受給額が上がることになっているが、ハイパーインフレでは対応不可能だ)。つまり、市場メカニズムによって強制的に年金額を減らされてしまう状況になる。実際、1990年代初頭にハイパーインフレが起きたロシアでは、そういう状態が10年くらい続いた。

 今や日本はあらゆる面で硬直化してしまっている。国は企業に雇用を守らせようとしている。しかし、企業は競争力を維持するために従来の新卒重視・終身雇用モデルからスウェーデンのような「Hire&Fire(必要な人材・人数を効率よく採用し、不必要になれば解雇する雇用モデル)」に移行したい。それができなければ海外に逃避するだけだ。その結果、日本国内の雇用がなくなっていく。その流れはすでにあり、しかも加速している。

 私は9月に『稼ぐ力』(小学館刊)を上梓したが、稼ぐ力というのは究極的にはアンビション(野心)がモノを言う。もっと良いものを作りたい、もっと喜ばれるサービスを提供したい、その結果、今よりも大きな仕事を任されるような人材になりたい、という欲求こそが「稼ぐ力」につながるのである。

 これから日本は、製造業では中国やASEAN(東南アジア諸国連合)、ITではインド、R&D(研究開発)ではアメリカなどと勝負していかねばならない。そういう時代に「プア充でいい」という人ばかりでは、あっという間にグローバル競争から落ちこぼれてしまう。彼らは「稼ぐ力」どころか「稼ぐ意欲」もないからだ。

 発想の転換が必要だ。むしろ「プア充時代」だからこそ、少しのアンビションと工夫、勉強、努力によって簡単に人より一歩先に進むことができる。今こそチャンスと捉え、稼ぐ力を高めようという人が1人でも増えることを願っている。

※SAPIO2013年11月号

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