ライフ

長年暮らす入居者を「償却切れ」と老人ホーム運営者呼び波紋

 最近、一部の老人ホーム運営者が、長年同じホームで暮らしている入居者を「償却切れ老人」と呼び、理由もなく退去を迫ったことが報じられ、波紋を呼んでいる。

 多くの老人ホームでは、入居時に高額の「入居一時金」を支払うことになっている。簡単にいえば、一定年数をそのホームで暮らすための「家賃の一括前払い金」だと考えればいい。その一時金は毎年少しずつ償却され、ある年数を過ぎるとゼロになる。つまり、一定の年数以上をホームで暮らすと、それ以降の家賃は“タダ”になり、入居者側は得をする。

 逆にいえば、ホーム運営側は損をすることになるので、そうした入居者を「償却切れ老人」と呼び、施設から追い出しにかかるのだ。

 たいていのホームでは、入居契約で「ホーム内で手に負えない病気になった」、「大声や暴力行為で他の入居者に迷惑をかける」といった場合は退去を求められると定めている。そうした条項を利用して、認知症の悪化などを理由に入居者を追い出すケースが少なからずある。そして、ホーム側は新しい入居者を募集し、また入居一時金を稼ごうとするのだ。

 そもそも、人生の円熟期にさしかかった高齢者が住み慣れた自宅を離れ、老人ホームに入るのは何のためなのか。それは、自宅での暮らしに不安があり、ホームならば残りの人生を最期まで安心して暮らせると考えるからだ。なのに、「終の棲家」の役割を果たさず、体よくホームから追い出すなど、言語道断である。

 老人ホームに必要なこと──それは、認知症になっても笑いながら普通の生活が送れること、そして、たとえ末期がんになっても枯れるまで手厚く看取ってもらえること、その2つに尽きる。「認知症」も「死」も、生の延長線上で、必ず訪れるものだ。「このホームなら大往生できる」という安心なしに、「終の幸せ」はあり得ない。

※週刊ポスト2013年11月8・15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト