芸能

草刈正雄 ハリウッド俳優と日本人の芝居の違いに落ち込んだ

 モデルから俳優へ転向し、ブロマイドの売り上げが年間1位を記録するほどの人気を獲得したあとの草刈正雄は、二枚目からコメディまで芝居の幅も広がった。ところが、小松左京原作、深作欣二監督の大作映画『復活の日』(1980年)でハリウッド俳優たちと共演して役者としての自信は吹っ飛ばされた。しばらくは落ち込んだと草刈が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が解説する。

 * * *
 1980年に公開された映画『復活の日』は、南極にいるわずかな研究者たちを残し、人類が細菌兵器により死に絶えるという壮大なSF作品だった。多額の予算が組まれ、南極、カナダ、アンデスといった世界各地で大々的なロケ撮影が敢行されるなど、邦画史上でも類を見ないスケールとなった。草刈正雄は、その主演に起用されている。

『復活の日』にはジョージ・ケネディ、チャック・コナーズ、ロバート・ボーン、ヘンリー・シルバ、オリビア・ハッセー、ボー・スヴェンソンといった錚々たる俳優陣もハリウッドから参加している。

「オリビアさんとのラブシーンでは、深作欣二監督は50回くらいのテイクを撮りました。こちらもアガっていたんですよ。オリビアさんは文句を言わずに付き合ってくれて、ありがたかった。

 全ての撮影を終えてラッシュで見たら、アメリカ人のシーンと日本人のシーンのあまりの芝居の違いに、しばらく落ち込みました。全く違う映画に見えた。とにかく、芝居をしているかどうなのか分からないくらい彼らは自然な感じなんですよ。

 僕らはテンションを上げて『よーい、スタート』となったらパッと始めるんですが、向こうの人は監督の『スタート』がかかっても芝居をやらないんです。時間が経ってから、やおら動き始める。役者って『スタート』と言われても本当はすぐに切り替えられるものではありません。そのため、彼らは自分のタイミングで演じている。たえず中心に俳優がいる。本来はそういうものだと思います。画の中では俳優が中心じゃないと。

 両者の違いをしばらく引きずってしまいましてね。それを励ましてくれたのが、夏八木勲さんでした。南極ロケでの日本人俳優は僕ら二人だけでしたが、本当に面倒を見てもらいました」(草刈)

●草刈正雄氏は11月28日より、ミュージカル『クリスマス・キャロル』に出演。東京・シアター1010、神戸・新神戸オリエンタル劇場など全国で公演予定。詳細はスイセイ・ミュージカルまで。

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか新刊『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)が11月14日に発売。

※週刊ポスト2013年11月8・15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

オリエンタルラジオの藤森慎吾
《オリラジ・藤森慎吾が結婚相手を披露》かつてはハイレグ姿でグラビアデビューの新妻、ふたりを結んだ「美ボディ」と「健康志向」
NEWSポストセブン
川崎、阿部、浅井、小林
〈トリプルボギー不倫騒動〉渦中のプロ2人が“復活劇”も最終日にあわやのニアミス
NEWSポストセブン
驚異の粘り腰を見せている石破茂・首相(時事通信フォト)
石破茂・首相、支持率回復を奇貨に土壇場で驚異の粘り腰 「森山裕幹事長を代理に降格、後任に小泉進次郎氏抜擢」の秘策で反石破派を押さえ込みに
週刊ポスト
別居が報じられた長渕剛と志穂美悦子
《長渕剛が妻・志穂美悦子と別居報道》清水美砂、国生さゆり、冨永愛…親密報道された女性3人の“共通点”「長渕と離れた後、それぞれの分野で成功を収めている」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
2020年、阪神の新人入団発表会
阪神の快進撃支える「2020年の神ドラフト」のメンバーたち コロナ禍で情報が少ないなかでの指名戦略が奏功 矢野燿大監督のもとで獲得した選手が主力に固まる
NEWSポストセブン
ブログ上の内容がたびたび炎上する黒沢が真意を語った
「月に50万円は簡単」発言で大炎上の黒沢年雄(81)、批判意見に大反論「時代のせいにしてる人は、何をやってもダメ!」「若いうちはパワーがあるんだから」当時の「ヤバすぎる働き方」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン
“トリプルボギー不倫”が報じられた栗永遼キャディーの妻・浅井咲希(時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫》女子プロ2人が被害妻から“敵前逃亡”、唯一出場した川崎春花が「逃げられなかったワケ」
週刊ポスト
24時間テレビで共演する浜辺美波と永瀬廉(公式サイトより)
《お泊り報道で話題》24時間テレビで共演永瀬廉との“距離感”に注目集まる…浜辺美波が放送前日に投稿していた“配慮の一文”
NEWSポストセブン
芸歴43年で“サスペンスドラマの帝王”の異名を持つ船越英一郎
《ベビーカーを押す妻の姿を半歩後ろから見つめて…》第一子誕生の船越英一郎(65)、心をほぐした再婚相手(42)の“自由人なスタンス”「他人に対して要求することがない」
NEWSポストセブン