ライフ

雑煮の味と餅 琵琶湖東岸と兵庫・岡山県境に「分食嶺」あり

雑煮の具は、地域の生産物を神様に供えるものだった

 お正月料理に欠かせない「お雑煮」。西と東では味付けも餅の形も違うのはよく知られているが、西でも細かく別れている。食の分水嶺について、食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、本日は元旦ということで、この食べ物に触れないわけにはございません。

 雑煮。過去たくさんの研究者がさまざまな調査で研究してきている食べ物です。雑煮は「神様のお下がりを人間がいただく」という意味が込められ、「神饌」となる地域の生産物を具として、その土地や家において長く受け継がれてきました。

 最近では、転居に伴う移動や、人口の一極集中に加えて、食の多様化が進み、「元旦は夫の実家の味の雑煮。2日は私の実家の雑煮」(大阪府・38歳・♀)、「全国のお雑煮からおいしそうな具やレシピを、部分的につまみ食い」(東京都・32歳・♂)というように家庭ごとにアレンジが加えられるケースも増えました。

 日本の食はよく東西にわけて例えられます。例えば雑煮なら「東はすまし、西は味噌」「西の丸餅、東の角餅」などと言う人がいますが、味についてはかなり偏った捉え方で正確に言うと「近畿(付近)のみ味噌」という捉え方が、より実情に近いと言えるでしょう。

 「伝えてゆきたい家庭の郷土料理集」(婦人之友社)に載録された全国213の地域での大規模調査や、研究発表された論文を横断して見てみると、各県内の大部分が「味噌」という地域は、大阪、京都、兵庫、和歌山、香川、徳島、福井くらいで、石川、滋賀、三重、奈良あたりは「すまし」と「味噌」が混在しています。

 実際、日本の食の分水嶺──というか、日本の“分食嶺”は、北陸三県の両白山地から、滋賀県・琵琶湖の東岸を通って、鈴鹿山脈、紀伊山地と続く線上にあり、「東のチャーハン、西のヤキメシ」の呼称問題や、カレーや肉じゃがに入れる肉は「豚か牛か」問題など、数え上げたらきりがありません。

 もっとも東西でその様式や呼称がわかれる食べ物でも、分食嶺以西の勢力図はまちまちです。雑煮の場合は、兵庫県と鳥取県・岡山県の県境から四国の徳島県・高知県境へと伸びるライン上で、再び逆転現象が生じ、以西はほとんどが「すまし汁」に。つまり「味噌」味は、近畿地方とほぼ隣県のみの雑煮のスタイルというわけです。

 一方で、「西の丸餅、東の角餅」という解釈はほぼ間違いのないところですが、餅の焼き方に目を向けてみると、九州などは県どころか市町村単位で「焼く/煮る」が混在します。さらに「ぜんざい発祥の地」とも言われる島根県・出雲地方(「神在(じんざい)」がなまって、「ぜんざい」になったという説も)では小豆雑煮で正月を迎えるなど、雑煮には無数のバリエーションがございます。

 毎正月にいただく雑煮ひとつとっても、全国津々浦々に祀られた八百万の神でつながる、日本の正月らしい風習だという事実をいま一度噛み締めつつ、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

トピックス

NY晩餐会に出席した大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《大谷翔平にエスコートされて》妻・真美子さんがNY晩餐会で羽織った“シックな黒艶コート”は全サイズ売り切れ…ブランドは「場合によって再販の可能性」 
NEWSポストセブン
2025年に成年式を終えられた秋篠宮家の長男・悠仁さま
悠仁さまが30平米庶民派マンションで一人暮らし…大学生活で直面する「息苦しいまでの制約」とは? 〈過去の皇族には「部屋は警護室直通」「山荘を建てた」ケースも〉 
NEWSポストセブン
「新年祝賀の儀」に臨んだ秋篠宮夫妻(時事通信フォト)
《ベルスリーブ、大きなリボン、黄緑色のセットアップ…》紀子さま、“鮮やかな装い”を披露されることが増加 “将来の天皇の母”として華やかな雰囲気を演出か
週刊ポスト
公用車事故にはナゾが多い(共同通信/時事通信)
「アクセル全開で突入」時速130kmで衝突した公用車に「高市氏キモ入りの大物官僚2名」重傷で現在も入院中…総理大臣官邸から発車後30秒での大事故、内閣府が回答した「当日の運転手の対応」
NEWSポストセブン
もともと報道志向が強いと言われていた田村真子アナ(写真/ロケットパンチ)
“TBSのエース”田村真子アナが結婚で念願の「報道番組」へシフトする可能性 局内に漂う「人材流出」への強い危機感
週刊ポスト
中国のフリマアプリに出品されていた旧日本軍関連の物品(筆者提供)
《新たな反日ビジネス》中国フリマアプリに旧日本軍関連の物品が大量出品、コメント欄には「中国人の悲劇を証明する貴重な資料」の言葉 反日動画の“再生数を稼ぐ道具”として利用か
週刊ポスト
ニューヨーク晩餐会に出席した真美子さん(提供:soya0801_mlb)
《どの角度から見ても美しい》真美子さん、NY晩餐会で着用“1万6500円イヤリング” ブランドが回答した反響「直後より問い合わせが…」 
NEWSポストセブン
逮捕された羽月隆太郎選手(本人インスタグラムより)
広島カープ・羽月隆太郎容疑者がハマったゾンビたばこ…球界関係者が警戒する“若手への汚染” 使用すれば意識混濁、手足痙攣、奇声を上げるといった行動も
NEWSポストセブン
米・ニューヨークで開催された全米野球記者協会(BBWAA)主催の晩餐会に大谷翔平選手と妻の真美子さんが出席(左・時事通信フォト)
「シックな黒艶コートをまとって…」大谷翔平にエスコートされる真美子さんが晩餐会に入る前に着用していた“メイドインジャパン”なファッション
NEWSポストセブン
Number_iの平野紫耀
《これだと次回から裏口から出すよ!》平野紫耀の全身ヴィトン姿にファン殺到…“厳戒態勢”の帰国現場で見せた“神対応”と現場の緊迫感
NEWSポストセブン
神宮寺勇太
Number_i・神宮寺勇太「絶対に匂いを嗅ぐんだから!」ファンらが到着ロビーに密集して警備員が警戒…去り際にスターが見せた別格の“神対応”
NEWSポストセブン
昨年7月に遺体で発見された女優・遠野なぎこ(右・ブログより)
遠野なぎこさん(享年45)が孤独死した自宅マンションの一室に作業服の「特殊清掃」が…内装一新で「新たな入居者の募集へ」
NEWSポストセブン