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皇后さま「透明人間になってもう一度本の立ち読みをしたい」

 神田神保町といえば、世界最大級の書店街だ。とくに古書店が多く、明治期に界隈に創設された学校にあわせて誕生、発展した。洋古書販売と和洋古書買取専門店の北沢書店を作家の山藤章一郎氏が訪ね、聖心女子大生だったころの皇后さまが来店した折りについて語った店主の思い出を報告する。

 * * *
 東京神保町に〈北沢書店〉という古くからの洋書専門店がある。1階は児童図書専門店〈ブックハウス神保町〉。親子で絵本を〈坐わり読み〉できる大きなベンチがあり、常時1万冊の児童書がそろう。2階にあがる。ツイードのスカートスーツ、金のブローチをつけた80を越す北澤悦子さんが若き日の皇后さまの話をする。

 遥かな昔、聖心女子大生だった正田美智子さんがここに卒論の資料を捜しにきたという。

「義母があたしに手招きするの。ねっほら、あの方、すごいきれい。気品があって才女のオーラがほとばしり出ているわね。あとで皇太子殿下とご結婚なされる人だと報道を知ったときはびっくり仰天いたしましたよ」

 卒論は『フォーサイト家年代記における相克と調和』だった。

「たぶん、ゴールズワージーの『フォーサイト物語』をお捜しに来られたんじゃなかったでしょうか」

 ゴールズワージーは『林檎の木』や『人生の小春日和』で日本にも馴染みの英国の作家。

「その後、妹さんの正田恵美子さんもよくいらしていただきました。『こんな本を捜しています、どこの誰それ』と記録しておく〈探求書ノート〉がウチの店には備えてありまして。そこにたびたび恵美子さんのお名前がございました。いま1階は洋書売り場をやめ、小学館さんに児童書売り場を出していただいてます。スマホではなく、本に親しむ子供たちをぜひ増やしたいですね」

 2007年、欧州5か国歴訪前の宮内会見で皇后さまは、「お供も警護もなしに1日を過ごせたら何をなさりたいですか」と問われて、お答えになった。

「透明人間になって、学生時代よく通った神田や神保町の古本屋さんに行き、もういちど本の立ち読みをしてみたいですね」

〈本の街〉神保町には約180の古書店がある。ぶらりと訪ねて見知らぬ本に出会う喜びは、スマホでは味わえない。

※週刊ポスト2014年1月24日号

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