ビジネス

日本が円安と共にコントロール不能のインフレに陥る可能性も

 アベノミクスは本当に効果を発揮したのか。日本だけが給油しながらアクセルを踏み続けるような状態を続けているので、今年は日本経済にとってかなりつらい年になると大前研一氏は分析している。

 * * *
 2014年に入り、日本経済の「潮目」が変わった。私は年初からその空気の変化を感じて発言してきたが、結論から先に言えば、今年はかなり“つらい年”になると思う。

 新聞・テレビなどは株価が大幅に下落した1月半ば頃からようやくその変化を報じ始めたが、予兆はすでに昨年末に現われていた。これほど円安になっているにもかかわらず、輸出数量が増えていないのである。その理由を克明に調べていくと、アベノミクスは本当に景気上昇・経済再生の効果があったのかどうか、甚(はなは)だ疑わしくなってくるのだ。

 安倍政権は景気を上向かせるために、いわば車にガソリンを注ぎ続けながらアクセル全開でブレーキを踏まずに突っ走ってきた。その象徴が、一般会計の総額で過去最大の95兆8800億円に膨れ上がった2014年度予算案だ。さらに、もし4月からの消費税引き上げで景気の腰折れ懸念が広がれば、補正予算を組むのは時間の問題である。

 振り返れば、EUではギリシャの財政問題に端を発した欧州債務危機の時に、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が「必要があれば、どこの国の国債でも無制限に買う」と言ったから、危機が遠のいて小康状態が続いている。ところが、ECBがどれくらい国債を買ったのか調べてみたら、なんと「ゼロ」だった。

 黒田総裁と異なり、ドラギ総裁は“口先”だけで、実際には全く買っていなかったのである。国債を買っていないEUと買いまくっている日本。それが現在のユーロ高の最大の理由である。

 要するに、EUはガソリンを入れてアクセルを踏むことはしなかったのだ。アメリカも少なくともアクセルを踏むのはやめて、ブレーキを踏むかもしれないという状況になっている。そんな中で、日本だけが給油しながらアクセルを踏み続けている。このままでは、さらなる円安とともに、コントロール不能のインフレに陥る危険性が高まる一方だ。

 賢い企業や個人は、すでに昨年までの円高局面で資産を海外に移している。それが今年はさらに加速するだろう。円安が進んだ今では、もはや遅きに失した感もあるが、とにかくインフレ危機への備えを急ぐに越したことはないのである。

※週刊ポスト2014年2月14日号

関連キーワード

トピックス

全米野球記者協会ニューヨーク支部主催のアワードディナーに出席した大谷翔平と、妻・真美子さん(左/時事通信フォト、右/提供:soya0801_mlb)
《真美子さんが座る椅子の背もたれに腕を回し…》大谷翔平が信頼して妻を託す“日系通訳”の素性 “VIPルーム観戦にも同席”“距離が近い”
NEWSポストセブン
司法省がアンドリュー元王子の写真を公開した(写真/Getty Images)
《白シャツ女性に覆いかぶさるように…》エプスタイン・ファイルで新公開されたアンドリュー元王子とみられる人物の“近すぎる距離感の写真” 女性の体を触るカットも
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
【2・8総選挙「大阪1〜10区」の最新情勢】維新離党の前職が出た2区、維新前職vs自民元職vs野党候補の5区で「公明党票」はどう動くか
NEWSポストセブン
なぜ実の姉を自宅で監禁できたのか──
《“お前の足を切って渡すから足を出せ”50代姉を監禁・暴行》「インターホンを押しても出ない」「高級外車が2台」市川陽崇・奈美容疑者夫妻 “恐怖の二世帯住宅”への近隣証言
NEWSポストセブン
東京拘置所(時事通信フォト)
〈今年も一年、生きのびることができました〉前橋スナック銃乱射・小日向将人死刑囚が見せていた最後の姿「顔が腫れぼったく、精神も肉体もボロボロ」《死刑確定後16年で獄中死》
NEWSポストセブン
間違いだらけの議事録は「AIのせい」(写真提供/イメージマート)
《何でもAIに頼る人たち》会社員女性が告白「ケンカの後、彼から送られてきた”彼女の方が悪い”とAIが回答したスクショ」ほどなく破局
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
国際ジャーナリスト・落合信彦氏が予見していた「アメリカが世界の警察官をやめる」「プーチン大統領暴走」の時代 世界の“悪夢”をここまで見通していた
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト、2025年10月15日)
《頬がこけているようにも見える》高市早苗首相、働きぶりに心配の声「“休むのは甘え”のような感覚が拭えないのでは」【「働いて働いて」のルーツは元警察官の母親】 
NEWSポストセブン
ジェンダーレスモデルの井手上漠(23)
井手上漠(23)が港区・六本木のラウンジ店に出勤して「役作り」の現在…事務所が明かしたプロ意識と切り開く新境地
NEWSポストセブン
元日に結婚を発表した女優の長澤まさみ(時事通信フォト)
長澤まさみ「カナダ同伴」を決断させた「大親友女優」の存在…『SHOGUN』監督夫との新婚生活は“最高の環境”
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
【訃報】国際ジャーナリスト・落合信彦氏が死去、84歳 独自の視点で国際政治・諜報の世界を活写 
NEWSポストセブン
薬物で急死した中国人インフルエンサー紅紅(左)と交際相手の林子晨容疑者(右)(インスタグラムより)
「口に靴下を詰め、カーテンで手を縛り付けて…」「意識不明の姿をハイ状態で撮影」中国人美女インフルエンサー(26)が薬物で急死、交際相手の男の“謎めいた行動”
NEWSポストセブン